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すみっコぐらし2019感想

 Amazonプライムで配信中の「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」を観ました。ネタバレ有。


 友達から「良いぞ」と聞いていたので、軽い気持ちで見始めたところ、とんでもなく現代的な作品で驚きました。
 映画冒頭、丸っこいキャラクターにバグっぽいノイズが走りつつ、月を見ながら涙を流している⋯。もうこの時点で「!?」状態。ゲーマーなら周知の「ノイズ=存在自体が不安定」の方程式が脳内で炸裂し、冒頭から心拍数が上がりました。

 そのままキャラ紹介に入っていくんですが、ここでこの作品における「すみっこ」の概念を丁寧に可愛く説明されます。

寒いところが苦手で南に降りてきた「白熊」
自分が何者かわからない「ぺんぎん?」(皿をなくした河童)
吸い上げられなかった余り物の「タピオカ」

 等々、錚々たるメンバーが軒を連ねています。初めてだよ、キャラ紹介画面で「すみっこって⋯そういうこと⋯?」て段々と首を絞められるような感覚になったの。

 すみっこ、平たく言うと「少数派」の人達。現代人が抱える問題を、ここまでかわいいふんわりした世界観で、それを壊さずに伝えるパワーがあるのが凄い。こういう可愛い系のコンテンツって、登場人物が夢と希望で溢れすぎて「可愛い」にはなるけど、「わかる」にはならない⋯と思っていたんですが、現代人であればすみっコ達の誰かの悩みを一つは持ってると思うので、外見以外の要素で“推し”が出来るのはマジで新しいなと思います。

 ファンタジーな絵本の世界も、ページの概念がちゃんとあって、ページ間を突き抜けるギミックとか妙に物理法則に則ってるところがあって好き。
ラスト、最初は「ひよこは外の世界があるというのを知ってしまったから、たとえ絵本の中で幸せになっても、外に行けないという悲しみは絶対に消えないやんこれ⋯」と思ってたんですが、

 ひよこの目的はあくまで「なかまが欲しい」というものであって、外に出たいというわけではないんですよね。外に出れなくて悲しそうだったのも、やっと出来たなかまと別れなくてはいけなかったからだと思う。
 だからこそラストで、すみっコ達がひよこのために落書きをして、家を立ててあげた事が⋯めっちゃ輝く。どちらかが犠牲になるのではなく、それぞれが考えて、あゆみ寄って、幸せになる選択を掴み取るっていうね。マジで泣く。

 ラスト、普通ならすみっコ達に行かないで!と言ってしまいそうな場面だけど、ひよこはそれをせずに、自分の身を省みずすみっコ達を絵本の外へ返そうとする。ひよこ自身、居場所の無い絵本の中にいることの辛さを知ってるからだろうなぁ。
 ひよこを含めたすみっコ全員、自分が辛いからこそ他人を思いやる事ができる⋯の鑑みたいな人ばっかりでほんと頭下がる。普通は逆なんだよ。余裕がある人じゃないと他人に優しくできないんだよ!!!!(有一郎側の人間)

 ひよこは生まれたところで、幸せになれた。
 「外の世界=至上」みたいな方程式が頭の中に出来上がっていたことに気づいて、反省した。

 それはともかく、みんなが外に出るときに「なかまの印」である花が散って行くのが演出としてハードすぎて「ここまでやるか!?」となった。画的に綺麗なのが無常。

 創作物に影響を受けて、現実の人間が変わる話が大好きなんですが、すみっコぐらしはその逆で、「現実の人間が、創作物のキャラクターを救うことができる」っていう話。そんな話、描きたいなぁ。創作物にはお世話になってばっかりだし

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推しはエビフライのしっぽです。とんかつにいろいろ委ねてる所がすき。セリフがない分、細かいSEが輝いてる。

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