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OBが語る!芸大・美大受験浪人生活


語り手:東京藝術大学油絵科合格OG今井

「立川に上京して良かった事」
わたしの地元は海辺の、車がないとどこにもいけない田舎だったので、今は免許がなくてもどこへでも行けて便利です。最寄りの美術館まで車で3時間かかっていましたが、今は見たいもの全て見に行くことができます。動物園も博物館も、お金があればなんでも手に入ってすごいです。人が多く、それなりにしんどいこともたくさんありますが、そのぶんふるさとの自然が美しく思えるのもありがたいところです。個人的に、立川は郊外だしとくに南口は汚くって、人々の生活がひしひしと感じられて好きです。

一年浪人して大学に入りました。タチビでの1年間でわたし自身随分変わったと思います。現役の頃は受験に苦しめられていたけれど、浪人してからは表現をすること自体に苦しめられました。苦しみで伸びるとかいうのではなくて、苦しみが深ければそのぶん喜びの質も高まるし、楽をするより楽しいなと思います。こんな風に絵を好きになれてよかったとも思っています。それと大学は人数が多くて、それだけに考え方の傾向や流行の波、普遍化の力が大きいのですが、タチビは規模がそこまで大きくないぶん社会性みたいなものが機能せずに、個人個人が独立していたように思います。みんなそれぞれ自分の考え方がしっかりとあり、それをいつでも伝え合える、表現者にとっては非常に良い環境だったと今では思います。


「諦めずに、感じたことを丁寧に

」

多摩美術大学グラフィックデザイン科合格OG川嶋

現役の時に私は第三志望に合格しましたが、でも、ふと心残りのある自分に気がつきました。大学に進めば楽しい四年間が待っているかもしれない。蹴って浪人したらどうなるかわからないという状況でした。でもここで諦めたら、ここからの人生が妥協で終わると思ったんです。だから私は浪人することに決めました。これでよかったのかなぁと思う日もありました。でも今は、浪人して本当によかったとはっきり言えます。描写力や表現力がついたのはもちろん、それ以上に自分と向き合うことができたのが大きかったです。自分と向き合うという点で私にとってタチビは本当にいい環境だったと思います。立美祭も考えるためにはよい機会でしたが、普段の授業で先生たちが受験の話で留まらずに、クリエイターとしての話をしてくれるというのが大きかったと思います。そしてタチビはアットホームな雰囲気で先生と話がしやすいです。先生と生徒ではなくクリエイターの卵として話をしてくれます。何気ない会話から学ぶことが沢山ありました。

 受験で言えることは、諦めずに自分を信じることが大事だと思います。思う通りに描けない作品も、諦めないで完成させようとする過程で色々な事が学べます。私は入試直前のデッサンでは色が上手く作れなかったり、光が綺麗に描けなかったりと、思うように制作できない時がありました。でも完成させるまでの過程で、トーンの整え方を教えてもらったり学ぶことが沢山ありました。そしてそれが入試本番で描いた作品にダイレクトに生きています。諦めたらもうそこから学ぶものはないですが、諦めなかったらそこから学習することができるのです。


「描き続けること」

武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科合格
武蔵野美術大学 基礎デザイン学科合格OG寺町

毎日毎日、石膏デッサンやモチーフ平面、立体構成をして徹底的に基礎力をつけてどんな課題にも答えられる力を付ける、というタチビデザイン科のやり方が私は好きです。
もちろんそれらは芸大の入試対策とも考えて、現役生の時から頑張っていました。しかし現役の時、希望していた学科に落ち、ショックを受け、これからのことを考えたり悩んだりしました。現役で美大生になる道もありましたが、ここで終わりたくない、ちゃんと行きたいところに入りたいと思ったのです。浪人したいと両親を説得するのに骨が折れて、くじけそうになったけれど先生たちにも助けられました。あの時に諦めてしまっていたら今の私はないです。先生たちには本当に感謝しています。
今振り返ってみると、浪人生活はそれほど辛くはなかったです。我慢することも多少なりともあったけれど、絵を描くことがもとから好きなので、出された課題を日々やることはあまり苦痛ではなかったです。もちろん面倒だと思う日も、行きたくない日もあったけれど、とにかく毎日通いました。地味かもしれないけどやっぱりこれが一番大事なことかなあと思います。タチビに行かなければ嫌になることもないけど良くなることもないと思いました。それから、友人たちの存在もとてもありがたかったです。彼らのおかげで毎日笑うことができました。
最初は固い、強引、キチキチ描きすぎとか言われ続けていた私のデッサンが秋頃からか、だんだん自然になってきたね、色が綺麗と言われるようになってきました。自分の悪い癖を直したくて、意識して鉛筆の使い方やこすり方を工夫しました。
立美祭も好きでした。2週間デッサンや平面や講評から離れて自分の好きな絵を一日中描けたからです。日々受験に追われるだけではなく、自分のやりたいことを再確認できるいい機会です。積極的に参加することをオススメします。
秋頃からはホームワークも始まります。本番までに自分の絵を完成させていきます。しかし入試直前になると、上手くいかなくなることも多くなり描いてる途中でこりゃ駄目だなあと心が折れることも多々ありました。その評価が良くない時は不安やら焦りやら諦めさえも感じました。しかし去年の私と違うのは、ここで落ち込まなかったことかもしれません。別にこれは本番ではない、ここでこういう失敗をして、本番は気をつければいいかと気を取り直します。駄目だった作品を他の作品と並べて先生と話したのも良かったです。そこからわかったのは光が綺麗に描ける手のポーズをつくることでした。これが本番のデッサンで常に心に留めていたことです。毎回毎回、良かったところと駄目だったところと反省していくことが、すごく大事だと思いました。タチビの先生たちにはほんとうに沢山お世話になりました。支えてくれた周りの人々、浪人を許してくれた両親には感謝でいっぱいです



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