RiotForce 第1章:氷結の魔女

フィドールの次元転移魔法「エクスパルーション」によって遥か彼方へ飛ばされたグライン。目覚めた場所は、見慣れない家の中。窓からの景色を見ると、雪で覆われた村だった。そこに現れたのはケントという名の少年とその母親。今グラインがいるこの場所はフリズル村で、フロスタル雪原にて倒れていたところを発見して助けたという。レイニーラ王国から遠く離れた場所にあり、それどころか北の大陸フロスタルに存在する雪国の村だったのだ。更にリルモとクレバルの姿もそこにはなかった。グラインは戸惑いを隠せないまま、事の経緯を全て話すとケントに連れられてフロスタル雪原の中央に存在するフロストール王国へと案内された。王国ではケントの兄リズールが他界した父の跡を継ぐ兵士長を務めていたが、氷を司る魔女に捉われているという。氷を司る魔女……氷結魔女フロスティアはかつてフロスタル大陸を支配していた恐怖の魔女で、フロストール王国の王家の魔力によって封印されていたが、空に不気味な雲が現れるようになってから封印が解かれ、王国の兵士を始めとする大陸中の男達を攫っていた。更にレイニーラ王国が存在する北西の大陸ノスウェイトへの船着き場へ通じる関所が氷壁に閉ざされてしまい、しかも氷壁はフロスティアの魔力によって並みの炎では溶かせないというのだ。レイニーラ王国へ戻るにはフロスティアを倒す以外にない。そしてフリズル村に住む一人の男が魔物によって攫われたという知らせが入る。事態を重く見たフロストール国王はフロスティアを迎え撃つべく、翌日に残った王国の兵士達総動員でフロスティアの住処である氷結の塔へ向かわせようとしていた。その日の夜、ケントの家で一晩過ごそうとしていたグラインは突然何者かの声を聴いた。助けを呼びかける少女の声。その声には何やら不思議な感じがする。夜も更け、吹雪に包まれた村の中。グラインは思わず、導かれるまま声の主を探した。皆が寝静まって誰もいないはずの村の中に、何かがいる。それは白い体毛で覆われた生き物……マントを羽織った犬のような生き物……が声の主であった。二足歩行で立つ白い生き物の名はティム。自らを世界の全てを知る者と称し、飲まず食わずで大陸内を流離っていて空腹のあまり倒れそうになって助けを呼びかけていたという。グラインはティムをケントの家に連れて行き、家にある食料で空腹を満たしたティムはグラインの事情を知り、同行する事となる。ティムには記憶を読み取る能力が備わっており、グラインの記憶を読む事によって事情を知ると同時に、グラインの事について何かを知っているかのようであった。半ばティムに連れられる形でフロスティアがいる氷結の塔へ向かうグライン。氷に閉ざされた塔を進み、最上階には氷の彫像と化していた多くの男が並んでいた。その中にはケントの兄リズールの姿もあった。そこに待ち受けていたのは、王国の兵士達を氷漬けにしたばかりの氷結魔女フロスティアであった。総動員で向かった兵士達も全員凍らされてしまい、立ち向かえるのはもはやグラインしかいなかった。凍てつく冷気を伴うフロスティアに単身戦いを挑むグラインだが、フロスティアの圧倒的な冷気の魔力に歯が立たない。ティムは「アナタには隠された力がアル。今こそあの力を呼び起こすのヨ!」とグラインに呼びかける。全身が凍らされる瞬間、グラインの脳裏にタロスによって倒されたフィドールの姿が浮かぶ。リルモ、クレバル、そして王国の魔導戦士軍の仲間達―――。突如、グラインの目が赤く染まり、フロスティアの冷気を跳ね返す程の炎に包まれ始めた。グラインの中に眠る潜在的な魔力が覚醒したのだ!魔力を覚醒させたグラインの炎の魔法はフロスティアの冷気をも寄せ付けず、荒れ狂う炎によってフロスティアは消滅した。フロスティアが倒された事によって氷漬けにされていた人々は解放された。船着き場へ通じる関所を塞ぐ氷壁は溶けてなくなり、リズール&ケント兄弟と別れたグラインはティムと共にフロスタル大陸を後にした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?