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蒼天に鳩を放て!-哭く生霊①-

 生霊。
生きている人間の霊魂が体外へ出て自由に動き回るといわれるもの(新村出編『広辞苑』第四番より抜粋)。

六条の御息所『源氏物語』


 これは、五芒星巡りに関連するもう一つの記録である。
2022年から2024年までの2年数ヶ月間。
私はとある女性の生霊と向きあい続けた。
…そう書けば少しは格好もつくが、内実は違う。
2年以上の間、私はある女性の生霊に押しかけ女房されていたのだ。
その女性は、Sだと名乗った。
しかし、私は現実のSを知らない。
だから、彼女が本物のSか判別することは出来ない。
世の中には色んな人がいる。
偽りの名を語る人、誰かになりすます人、なりすましの挙句、自分は別の誰かだと思い込んでしまう人…。
祈祷師という役柄は、人の心の薄暗さに直面する事が多い。
これまでも私は、「そんなことある?!」としか言いようのない人間の心を見つめてきた。
だから、この女性も自称Sかもしれない。
しかし、そんなことはどうでもいい。
生霊でやってくる女性がSだろうと、自称Sだろうと、私の願いに変わりはない。
生霊さん。お願いですから、来ないで下さい。
これが、まごうことなき本心である。

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