2024改定版 サラブレッドは馬刺しにならない論争に終止符


1.はじめに

僕の記事を過去に読んでくれた人は分かっていることだと思うが「サラブレッドは馬刺しにならない」なんて言葉は大嘘です。

肉質が硬いから人間が食べられないよ…なんてデマもいいところ。でも、そんな人をネットで見つけて一人一人にリプライを送り「貴方の言っていることは間違えています。」なんて効率が悪いことはやらないし、やったとしたらこっちがおかしい目で見られてしまうことは明らかなので、過去にも記事を作って「競走馬も引退したら肉になるよ」と書いているのだけれど、いかんせん知名度不足で、大きく広がるというところには至っていない。
そこで、今回は最新の数字を出していって、こことこの数字を計算したらこうなるけれど、合わないよね。じゃあその不足分は何でカバーしているの?サラブレッドだよね?という現実にもう一度触れていきたい。前年の記事改訂版という位置付けにしました。

そしてこの記事は、誰かを糾弾しようとする意図はありません。事実を知って欲しいが、それでも僕は競馬が好き。競馬が好きだからこそ、本当の事を知っておきたい。そういう思いから定期的に記事を書いています。


2.どう「矛盾しているか?」

まずこのサイトから見て貰うのがいちばん早くて、明確に分かる。
畜産物流通調査は文字通り、畜産物の流通調査で年間何頭が屠殺されているか?というのが分かる資料だ。牛や豚と同じように馬の情報も記載されている。
そして、動物検疫速報は日本に輸入された動物が分かる資料だ。馬では、肥育用に輸入された馬(肥育用素馬)の頭数が分かる。
そして、ここには添付出来ないPDFファイルの資料がある。農林水産省が公開している資料なのだが、各々が検索サイトで
肥育用素馬の輸入に関するリスク評価書」と調べたらダウンロード出来るはずなので、この3点(畜産物流通調査・動物検疫速報・肥育用素馬の輸入に関するリスク評価書)をチェックして欲しい。

まず、動物検疫速報から。
ここ3年間で肥育用に輸入された馬の数は、毎年約3000頭で推移している。(R3 3068頭 R4 3438頭 R5 2953頭)
そして、農林水産省の資料「肥育用素馬の輸入に関するリスク評価書」によると、多くの仕向先農場では輸入馬を1年弱肥育し(中略)出荷している。という記載がある。
ここで、畜産物流通調査を見てみよう。
ここ3年における馬の屠殺数は、年間約1万頭くらいだ。(R3 11364頭 R4 11193頭 R5 10098頭)

年間約3000頭が輸入されて、1年くらい肥育されている現状で、1年間に屠殺されるのは1万頭以上なら少なくとも7000頭は日本国内で生産されていることになる。

ここで、日本馬事協会のホームページにある「重種馬関係」というファイルを見て貰えれば分かるが、日本国内における重種馬の生産頭数は、年間約1000頭ほど。在来種やポニー、乗用馬などの生産頭数も多くはない。

全ての重種馬が屠殺に回されても、数字として全く足りていない事は明らかだ。
じゃあ残りの数字、最低でも年間6000頭以上の「国産馬」はどこから出てくるか?と言ったら、サラブレッドに決まっている。というか、サラブレッドしか居ないのだ。
こうやって分かりやすい図式が成り立っているのだけれど、皆はその事実になかなか気付こうとしない。逆に気付かない方が幸せなのかもしれないけれど。

ここで「畜産物流通調査」って言っても、その肉がどういう風に流通しているか?は分からない訳だから、サラブレッドの肉は硬くて缶詰や動物園で猛獣のエサにしかならないよ。と言う人がいるかもしれないので補足する。

補足その1 「コンビーフ」

まず、缶詰について。
馬肉を使った缶詰で言えば、ニューコンミートでしょう。コンビーフは字の通り、牛肉じゃないと使えませんので、馬肉を使った商品はコンミートになります。
ここで考えて欲しい。
コンミートを最寄りのスーパーなどで見かけるか?
おそらく答えは「それほど多くは見かけない」になると思います。すなわち、需要はそんなに高くないし、コンミートの場合だと補完する役割でコンビーフがある。
そして、日本でコンミートを製造・販売している会社のホームページを見ていると、使用している馬肉の産地は海外が多い。
海外から輸入した馬肉でコンミートを生産している訳だから、国内で屠殺された数字と、海外から輸入された肉で作るコンミートは関連しない。
だから、缶詰になっているサラブレッドの肉もあるだろうけれど、数としては少ないだろう。というのが僕なりの結論。

補足その2 猛獣のエサ

そして、動物園で猛獣のエサとして馬肉を使うケース。

各サイトを見ていたら「輸入馬肉」を与えているとなっている。もちろん国産の馬肉を与えられていることもあるのだろうけど、割合としてはどうだろうか?
馬刺し専門店のペット用馬肉で国産品というのがあったけれど、1キロで1400円と記載されていた。これでは、1日で大量の肉を消費する猛獣のエサに国産の馬肉を与えるというのは、無くはないのだろうけれど、費用の問題からちょっと厳しそうに思える。もちろん、大量・定期購入による割引があるかもしれないし、このあたりは統計に出ない話であるが故に、本当の事は分からないのが現状だが、それなら報道でライオンのエサに「輸入馬肉」とは書かないだろう。
もし「国産の硬い馬肉」を使用していたとして、ある程度の需要を動物園が担っているとは思えない。費用的にも厳しい面があると僕は思っている。

3.結論

だから「サラブレッドの肉は硬くて、人間は食べられない」というのは、まかやしでしかない。「未出走の馬はまだ筋肉がついていないので、その馬を仕入れて肉にしている」なんて言っている人がいるけれど、競馬に出走したら自動的に筋肉が付くシステムではないし、育成段階で筋肉は付くわけだから、僕からすればこの考えは理解できない。肉になっている。

この記事内に書いたが、太らせればサラブレッドの体脂肪率は豚とそう変わらない。
こう考えれば、サラブレッドの肉が硬いというのがなんだか怪しく聞こえてこないだろうか?

実際に、馬肉を販売する業者がホームページで「当社の馬肉は、国産の赤身」を使用していると書いていれば、大体はサラブレッドの肉を使用している。産地が青森・福島・長野あたりならその可能性は高い。
そして実際に、肥育されている馬の様子がホームページなどに掲載されていて、これはどう見ても軽種のサラブレッドだなぁ…というところもある。
当社の馬刺しは純国産の軽種です。と謳うところがあるのだし、本来はそれをそのまま信用すればいい話なのだが、何故かサラブレッドが馬刺しにならないとしている人がいる。

以前の記事にも添付したが、TDN(サラブレッドデイリーニュース)とBLOODHORSEが報じているように、アメリカで種牡馬だったサラブレッド、The Deputy がアメリカの肥育場から助け出されたとするニュース。
そして、日本でも種牡馬が引退後、肥育に回されたとする報道があった。恐らくそれは本当だろう。
実際に昔の記事で自分が書いているが、繁殖牝馬セールで高齢の空胎馬が買われていった先を調べてみたら、馬肉を専門に扱う業者だという事実もある。
もっと言えば、僕が厩務員をしていた時に肉屋のトラックに馬を載せたことがある。
重種馬だけが肉になるのではない。軽種のサラブレッドも肉にならなければ、統計調査の数字がおかしいことになる。
と、言うのが僕の言い分であり、それに基づく経験・数字も出していれば、各社の商品説明でも触れられていることなのだ。

4.サラブレッドが馬肉になるのは「悪」なのか?


「サラブレッドは走るために産まれてきたのだから、馬刺しにするのは可哀想」という意見を見たことがある。
確かに、サラブレッドは速く走るために優秀な馬同士を交配させてきた歴史がある。肉にするのが一番の目的ではない。
だからこそ、速く走れないと思われた馬は血を残せないのだ。二次利用に回すしかない。
そのなかでひとつの形が畜産利用、いわゆる食肉処理だと自分は考えている。

例えば、廃鶏と呼ばれる産卵成績が落ちてきた鶏は肉になる。でも最初の目的は卵を取ることだ。それが加齢に伴って産卵成績が落ちると肉になる。

サラブレッドもこうなんじゃないだろうか。
良い成績を残せば、繁殖への道がある。もちろん馬主との出会いも関係する。そして繁殖となり良い子を出せなかったら淘汰される運命にある。もちろん現役時代にも淘汰される運命はある。それが、競馬という競技の宿命だと自分は理解しているけれど、皆が理解出来ることだとは思わない。

だからこそ、サラブレッドは肉になる。という記事を僕は作っているし、それは現実だ。
センセーショナルに煽って、競馬廃止論に繋げる動物愛護活動家もいるが、自分はそうじゃないしそうなりたくもない。

イギリスダービーやグランドナショナルを妨害した、アニマルライジングという動物愛護団体はサラブレッド種の絶滅を最終目的にしている。

結果的に動物愛護団体などは、動物を大切に扱うため、競馬を廃止させたいのだろう。
日本ではまだ、コースに出ていって妨害する活動家は居ないが、許可を得ていない競馬場からの生配信が禁止されているのにもかかわらず、配信をした動物保護団体がある。まだ直接的行動には出ていないが、海外の報道を見て感化され、コースに飛び出す輩が出てこないとも限らない。

だからこそ、冷静に議論をするのとある程度の現実を知らせておくのが大事だと考えこの記事を作成した。サラブレッドが肉になるのは淘汰されているからであり、それが生存競争でもある。そして二次利用の形でもある。
自分はサラブレッドが競走馬となり、そして引退後に肉となるケースがあることを悪だとは思わない。だが、皆がそう理解して貰えるとも思わない。

この記事で伝えたいことは、今の時代は「隠していたら」なにかを言われてしまう世の中なのだから、隠すなら徹底的に隠さなければいけない。でも、それは情報公開の波で厳しい現実がある。そして、今まで隠していた事実!というのは、目を引くタイトルだろう。
だからこそ、競馬の仕組みからしてそうなってますよ。と言えたなら、すごく楽だと思っている。攻撃されても、何でそんなことも知らないの?とトボけられるのではないだろうか。と個人的には考えているからだ。

競馬がこの先も続いていくために、そしてより強い馬を求めるファンのために出来ることは、競馬の発展を願うことだけだ。だからこそ、つまらないことで競馬のイメージを下げたくない。肉になっていることを公表すれば、イメージダウンに繋がるかもしれない。それでも書いているのは、大手マスコミが触れない今だからこそ、本当のことを書いておかなければ間違った知識で競馬の攻撃をしてくる人が、必ず現れるから。
マスコミだってデマを流す世の中、添付した記事でも書いているが、知ってか知らずか触れないのもマスコミの報道姿勢だ。
だからこそ、僕の書いている記事には嘘を載せていない。それはこの記事に目を通した人全てに僕から贈る言葉です。

5.最後に

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。物書きが本職ではないですし、いかんせん学がないもので、読みづらい面も多々あっただろうと思います。
また、確認はしておりますが誤字などがあった際にはコメント欄で教えてくださると助かります。そして、これについて聞きたいなど質問があれば受け付けていますので、いつでもコメント欄に書き込んでください。



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