マルセル・ポート (1901 1988 87)
交響曲1-7 2021.05.16
次はベルギーの作曲家、マルセル・ポート。吹奏楽コンクールでの自由曲にポート「奇想曲」を取り上げたことがあり、とりわけ親近感と懐かしさがある。全部で7曲、いずれも3楽章形式の20分程度の曲であり、1,2番はフランス的な明るさに満ちており、3番以降は新古典主義へと変遷する。
交響曲1 2021.05.16
ハンス・ロトマン/ブリュッセル・フィル
ポート 交響曲1番、ハンス・ロトマン/ブリュッセル・フィル。1楽章はフランス的な軽妙さ、滑稽さ、楽しさがある。2楽章はFlのゆったりした旋律からOB,Claの民謡的な旋律へ引き継がれ、Jazzと記され激しく始まる3楽章にはSaxも入って底抜けにお洒落に盛り上がる。ラベルのような部分もあって楽しい曲。
交響曲2 2021.05.16
フランツ・アンドレ/ベルギー放送響
ポート 交響曲2番、アンドレ/ベルギー放送響。1番よりもシンフォニック。明るくフランス的なところは同じ。1楽章は素朴な民謡の主題が盛り上がって派手に終わる。この頃から少しショスタコーヴィッチ的な響きも感じる。2楽章からの怪しげな雰囲気を継いで始まる3楽章は激しく派手に盛り上がって終わる
交響曲3 2021.05.16
フレデリック・デフレーセ/モスクワ響
ポート 交響曲3番、デフレーセ/モスクワ響。3番から一気に新古典主義の様相に急変する。1楽章は陰鬱に始まり緊迫感のあるリズム運び。2楽章も不安定な雰囲気でリズムが加速、3楽章の神経質な掛け合いからPercのリズムを強調した駆け上がりはショスタコーヴィッチを少し思わせる。奇想曲のタネもあった
交響曲4 2021.05.16
レオンス・グラス/アントワープ・フィル
ポート 交響曲4番、グラス/アントワープ・フィル。スタッカートの効いた非常に緊張感のある出だし、冷たく硬質だが軽快。2楽章も弦の冷たい響きからの盛り上がりと静けさ、3楽章の木管からの響きはまさにショスタコーヴィッチ、スピード感と歯切れよさはお気に入りです。ここでも奇想曲のタネを発見
交響曲5,6 2021.05.16
フレデリック・デフレーセ/モスクワ響
ポート 交響曲5、6番、デフレーセ/モスクワ響。完全に新古典主義派の音楽になった。逆に作曲家、曲の特色は減り面白みも少なくなってしまったように思う。楽章の構成も似ており5番だけの特徴はあまりなく、まだ6番の方が面白い。冷たく激しいところもあるが悲壮感はなく、3楽章では軽妙さも戻る。
交響曲7 2021.05.16
フレデリック・デフレーセ/モスクワ響
ポート 交響曲7番、デフレーセ/モスクワ響。1楽章は、さらっと細かな動き、リズムで推進力を付けて、暗くならず軽快な感じ。2楽章は他の曲同様、静かで調性が不確か。3楽章になり一気に加速し、さわやかにスピード感があふれて終わる。5,6番よりも全体的にすっきりしている
交響曲1-7 2021.05.16
マルセル・ポート 交響曲1-7番を聴いた。全集だけど、4つのオケの演奏。7曲の中では、作曲家の元々の姿であろう1番と3番以降の新古典主義的な曲を代表して4番が面白いと思う。4番以降、随所に「奇想曲」につながるタネを見つけることもできたし、ショスタコーヴィッチの影響が大きいのには少し驚いた。
奇想曲 (カプリッチオ)の想い出
マルセル・ポートの音楽とは、もう40数年前に出場した吹奏楽コンクールの自由曲として選んだ「奇想曲(カプリッチオ)」が最初の出会いだった。当時、どのようにこの曲を選定、入手したのか、奇跡的に巡り合った曲を、作曲家や曲の情報もなしに、朝から晩まで何か月間も練習を積み重ねたことを覚えている。
コンクール全国大会当日、神奈川県民ホールの舞台に立って演奏を始めたとたん、課題曲の冒頭で、絶対にあってはならないと念を押されていた部分にHrnのミスが出てバンド全体に動揺が走った。課題曲の演奏が今一つ地につかぬまま、自由曲の「奇想曲」を演奏することになった。当時のバンドは、どちらかというと金管主導のバンドで、課題曲のミスを自由曲で少しでも取り戻さねばと、無言の焦りがあったようにも思う。「奇想曲」ではTrp、Trbは、断片的にリズムを刻むような場面が多く、実はあまり聞かせどころがなかったが、それでもその大事な出番で、主力のTrpに焦りからかまたミスが出て、演奏中も「これはまずい」と思ったのを覚えている。
何とか演奏を終え、それから審査発表までが長かった。自分たちの演奏としては満足のいくものではなかったが、結果は金賞を受賞することができ、喜びよりもほっとしたのはよく覚えている。
すべてが終わり、打ち上げにパートごとに横浜の中華街に繰り出し、遅くまで飲んで騒いだ。帰りに、吹奏楽連盟の役員のよっぱらいのおじさんを担いで宿舎まで引き上げたことや、途中で誰か知らない人の手帳の住所録を拾い、後日、届けたことなど、なんとなく覚えている。
今回、7曲の交響曲を聴いたが、現在でもポートおよび曲に関する情報はほとんどなく、作曲の年代も分からないけど、「奇想曲」に出てくるリズムや調性、サウンドなどより、おそらく4番以降のいずれかの曲と並行して書かれたのではないかと思う。「奇想曲」の聴きどころは、交響曲にも随所に出てくるリズムをバックに、中間部分の綺麗なメロディーラインにあると思う。この部分は、木管とフリューゲルホルンで演奏することになっているが、フリューゲルホルンは超絶難しい。当時、名手のK君がいとも簡単に吹きこなしていたのだが、おそらく他のバンドではできる人は少ないように思う。
このフリューゲルホルンは、実は大阪のとある下町の楽器工房で10万円で売られていたもので、まったくの偶然のめぐり逢いだった。柔らかな音色だけどピッチが怪しく、K君も苦労して手懐けていたのを覚えている。
コンクールシーズンも終わり、「奇想曲」を演奏することもなくなったある日、久々にこのフリューゲルホルンを倉庫から取り出し吹いてみたところ、全く「鳴り」が失せてしまっていた。結局、ひと夏だけの楽器だった。それだけ過酷な練習に耐えて、楽器の寿命を全うしたのだろう。戦友。
Youtubeにアップされた当時の演奏、特に中間部のメロディーを聴くと、舞台から見た客席や演奏中の緊張感や焦りも思い出すが、それ以上に懐かしさがよみがえる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?