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さらば、配車室!

みなさま、こんにちは。ここ何本かの記事は自分のことばかり書き、仕事の記事を書くのを忘れてしまいました。さて、タクディの近況はと申しますと「会社を退職しました。」→しかも1カ月半も前に。
私が辞めるまでに配車室の仕事をしてみて思ったことを書いてみます。


1:人手不足のしわ寄せ

最近、ニュースや動画サイトで「バス、タクシー業界慢性的な人不足」というのを拝見されたことはありませんか?タクシーはなぜ人手不足なのでしょう?私が思うに2つのパターンがあります。

1-1:コロナ不況

コロナウィルスの流行や外出自粛も多くタクシーに乗る人が減ってしったというのが大きいでしょう。外出しないということはお金が回らず不況になります。会社は大なり小なり数十台の営業車を抱えていますから維持費や税金、職員の給与などを支払わなくてはならず資金を切り詰めても限界が来ます。倒産する会社もあります。私の住む広島市も「廣島タクシー」という大きな会社がありましたがコロナ不況で倒産してしまい驚いたのを覚えています。乗務員は歩合給なのでお客さんが乗らないと給与になりません。手取りで30万以上あったのに、1/3以下に給与が下がったと話してくれた乗務員さんもいました。生活が懸かっている身としては変動の激しいタクシーより固定給の他業種のほうに行きたい。そう思い退職された運転手も多いのです。
車庫には担当乗務員のいない「休車中」と張り紙のしてある車がボンネットを開けて寝ている。そんな光景が当たり前でした。

1-2:乗務員の高齢化

タクシーの運転手」という仕事をポンと思い浮かべたら皆さんは何を想像しますか?「おじいちゃんがやってる」とイメージしたそこの貴方!正解です。タクシー運転手の多くは65歳以上の高齢ドライバー。私が勤めていた会社のドライバー数は3桁いましたが平均年齢は67歳。まだまだ若手の人が足りないのです。タクシーのドライバーはただドアを開け客を乗せ走るという作業のほかに車いすや積荷の上げ下ろし勤務時間は10~18H日勤乗務員なら月の休みは10日弱。私の会社は乗務員だけでなく内勤の人間でも同じでした。ここで挙げたのは、ほんの一部ですが若い方は「そんなのブラックじゃん!やりたくねぇよ」と思うことでしょう。そして高齢者は「しんどい身体をこき使わせるのか!もう無理」と退職されていきます。若手が欲しいという需要に対して志願して入社する方、つまり供給が少ない。そして健康にリスクのある高齢者に長時間の運転をさせるわけにはいかないので、最近では短時間乗務という形で働いてもらい定時には絶対に帰らせるという取り組みをしており結局は車庫に使わない車しかないというわけです。

1-3:乗務員だけではない配車室も人手不足

配車室って入退職が激しい部門でもあります。かくいう私も半年で逃げだしたクソ野郎です。配車室は「何でも屋」なんです。
私がいた会社では2,3人で電話を取っていました。1日1000件ほどは電話がかかってきますがこれだけの人数ではすべての電話に対応させていただくのは無理です。「無線配車なんてただ電話取ってPCポチポチしてればいいんだろう」と思っていましたが大きな過ちでした。苦情処理、忘れ物の問合せ、料金の確認、車種の問合せなどなど対応することは多岐にわたります。
苦情や忘れ物の問合せのお電話を受けた際は数分などでは収まりません。
回線がすべてふさがり、不通音か「ただいま、電話に出ることができません」となります。

「タクシーに乗りたい」というお客様の需要と運行台数の供給に大きなマイナス差がある。配車室に電話をかけても「車がいない」と言われ確保できても到着まで時間がかかる。お客様はイライラが募り怒りの矛先をぶつけるのは配車室。
・「頼んでもまだ来ないのか!いつまで待たせる」
・「お宅はサービスが悪い!」
・「まえはすぐ来てくれたのにどうなっているんだ!」
・「お前の会社、俺を迎えに来たくないからわざと遅くくるのか!」
・「近い距離だからと客差別してるんじゃないのか!?」
毎日毎日、この言葉を聞き続けてきた配車員ができること。ただ「お待たせして申し訳ございません!」と謝ることしかできないのです。
そして、その申し訳なさと「なぜ私がこんなに責められる必要があるのか」
と悩み体調を崩したという流れです。

2:乗務員との意思疎通の難しさ

2-1:乗務員と内勤の関係性

配車室というのは一般のコールセンターと違い、相手をするのはお客様のみならず乗務員に無線指令を出すのも仕事の一つです。会社によって「無線室」、「指令室」という場合もあります。乗務員とのやり取りは顧客情報、道順の指令やキャンセルになった場合の連絡なども行います。

あくまでも私見ですが、配車員は指令こそ出しますが、タクシー会社においては乗務員のほうが立場は上役です。乗務員がやっていることは旅客運送営業。つまりお客様を迎えに行き、目的地に運び、料金を頂き、会社に持って帰ります。会社の売上に圧倒的に貢献しているのです。そうして乗務員たちが懸命に走って得た売り上げの一部が配車員の給与になるわけです。

ちょっとでもポカをしようものなら
「俺たちが稼いだ金で飯食ってるくせにふざけんじゃねぇ!」
とお𠮟りを受けるのです。


2-2:乗務員さんの性格やワークスタイル


乗務員というのは「会社員でもあり個人事業主でもある」
会社の車を借り、制服を着ていますが営業所さえ出てしまえば帰庫するまでは自分が社長のようなもの。決められた営業エリア内の好きなエリアを走り、好きな時に休憩できます。無線を取る取らないも自由。給与のいい乗務員を見て思ったことは「無線を取らない」「一匹狼気質で縛られることが嫌い」な方が多いです。

無論ですが、「距離なんて関係ないです!ガンガン無線打ってください。お役に立てるよう頑張りますから。」と言ってくださる方もいます。

ちなみにそんな方々を私は「神様」と心の中であだ名をつけていました。

無線迎車を取ってしまうと車両を回送し乗客を運ぶ時間で1時間ほどつぶれるといいます。1時間あれば中心部流しで3、4組のお客様を拾えるとのこと。もし無線迎車がワンメーター(広島市なら初乗り¥670)だったら無駄な時間だったし、もしそれがラッシュ帯や深夜帯なら稼ぐチャンスを逃したとなるのです。そのフラストレーションはどこに向かうのか?
もうお分かりですね?無線を飛ばした配車員なんです。
・「誰だ!?クソみたいな無線打ちやがったのは?」
・「行ったらゴミ客だったじゃないか?あてつけてわざと打ったのか?」

ゴミ客=ワンメーターもしくはそれより1つメータが上がったほどの近距離で御乗車のお客様

・「俺の仕事の邪魔しやがって!稼げなかった分お前が負担しろ!」

などなど罵詈雑言は当たり前です。ここに書いたのはごく一部ですがこれだけでも嫌な気持ちになりますよね?まして私が住んでいるのは広島。広島弁でこれは・・・。ねぇ。

3:お客様は神様?

「お客様は神様です」演歌歌手の三波春夫さんが語ったとされる言葉です。
この意味は何でしょうか?三波春夫さんのオフィシャルサイトを覗いてみるとこう書いてあります。

『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです』

出典元:三波春夫オフィシャルサイト
https://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html

私はこの記事を書くまで「客から金をもらって歌うのだからありがたい存在神様のようなもの」という意味だと誤解していました。30歳手前になって無知なことが多いものと反省しています。しかし「お客様は神様です」というフレーズが独り歩きしてしまい、今やアクの強~いお客様の代名詞になってます。配車員をしていてお客様から伝えてほしいことは氏名、場所、予約ならその時間だけ。後のことは「ここでは対応できません」と言って他部署に回せばいいのですが、お構いなしの方が多いのです。

・「タクシーがいない、ふざけんな。何とかしろや!金払ってやるんだぞ。お客様は神様だろうが!神様にそんな態度取るのか!あぁ?」

・「早く来なさいよ!私今日アイスクリーム買ってんのよ?家に帰るまでに溶けちゃうじゃない?」

・「運転手の○○の態度が気に食わない!住所教えろ!」

・「私、お宅の社長と知り合いなのよ!あんたのこと言ってクビにしてもらうからね!」

・「忘れ物したんですけどー。え?警察に届けた?なんで?持ってきてくれたらいいじゃない。役に立たないわね?もう使わないから!」

・「5分で来い!遅れたら金払わないからな。」

書いていたら胃が痛くなりましたがこれが毎日毎日。そんなの聞き流せばいいじゃないか。と思いますよね?夢や幻聴になって聞こえてくるんですよ!
ホントに頭に来たら「この野郎、神様じゃなくてホトケ様にしてやる!」と
腹の中で思いますが。見えない相手だと何してもいいと思う人多すぎです。

結果:お客様や乗務員とどう意思疎通をすべきか?

お客様とはどう接する?

お客様には必要なことだけ聞き、毅然とした態度で接すること。無理だと思えば配車室の管理職や担当管理者にさっさと投げて次の電話を受けるこれが一番です。

乗務員とはどう接する?

コミュニケーションに重きを置くならお客様ではなく乗務員と連携を密にしましょう。朝の挨拶、出庫前に「行ってらっしゃい」、無線を取って頂いたら帰庫した際に「お帰りなさい!今日もありがとうございました。助かりました。またお願いします!」などなど一言添えるといいです。それを毎日繰り返す。やってる人間とやらずに配車室に籠っている人間とでは対応が違ってきます。また質問もガンガンやりましょう。ルートや指令でミスをしたとき「ここのルートはどう説明しましょう?」「次どんな指令ならわかりやすいでしょうか?」などなどウザいくらい聞くと普段ムスッとしている乗務員でもだんだん教えてくれます。みんなプロですし仕事することにおいては大切なことでもありますからね。
そういう積み重ねをしていって業務をやると無線迎車をお願いした時「まぁ、タクディ君の頼みならいいよ。」とか「あぁ、タクディ君?予約もらったんだけど入れといて」などなど円滑にいくこともありました。

最後にタクシーに乗るお客様へのお願い

タクシーの配車というものは人間のやる仕事ですのでミスはベテランでもあります。お怒りの気持ちは重々承知です。ただ電話を取った人間に強く当たっても何も解決しません。配車員に苦情があれば会社の事務所に。乗務員に苦情がある場合はレシートを受け取りタクシーセンターという所が全国にあります。苦情を受け付け会社に報告し会社から担当者へしっかり指導するようきちんとした道順ができています。また乗務員は忌避できる会社も多く「この運転手に乗りたくない」といえばシステム上で無線配車が行かないようになっています。配車室はあくまで車の手配をするだけの部署です。担当外のことは何もわからないのです。だからすべてのことは申し訳ないですが対応しかねます。どうか配車員を責めないで差し上げてください。
そして、うまく配車がいった場合「ありがとう」「よろしくお願いします」と一言添えて頂ければモチベーションはあがります。客に気を遣わせるのかと言われますがたった一言で気持ちは救われるのです。

また最後の最後に偉そうに書きましたが今日は素直な気持ちを書いてみました。では、またお会いしましょう。













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