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山形の姥神をめぐる冒険 #41

【東町公民館】  河北町谷地乙 2024年4月

 芽吹きを待つザクロの木の下に座るのは、バラバラに砕けてしまいそうな姥神だった。膝に置かれた五円玉はすっかり変色し、クマの人形だっていつからあるのやら。

 公民館の入り口のすりガラスの模様が所々違っているのは、割れたのをその都度修理したせいだろうか。雨どいの雰囲気や壁にはめ込まれたタイル石の模様など、なんとも言えない味がある。佇まいから察するに、今だに公民館として現役のようだ。

 この公民館のある小路から表通りを抜けていくと、東林寺という寺に出る。門の向こうからお香の香りと読経が聞こえてくる。満開の桜を見ながら歩くと濃い死の匂いがする。あの世はすぐ隣にある、という思いがしきりにしてくる。桜に死を連想するのは何故なのだろう。こういう思いは何処からやってくるのだろう。
 急速に変化していくこの世の時間が、寺の板塀の前ではねじれてあの世につながっているようだった。経文の中へ入り込んでいくような浮遊感。信仰との出会いとはこういうタイミングで訪れるのかもしれない。

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