東京

ひさしぶりに好きだった人が夢に出てきて、鮮明な顔と肌触りに心が折れた。そのうえ彼女の出産直後のシーンで、夢の中の自分は、彼女のもとへ行くために、混雑したエレベーターを待たずに、長い階段を駆けていた。そして赤子の顔から、彼女と彼女の夫の顔を見出していた。彼女だけが世界でいいのに。すこしでもいやな空気を感じると涙が出るし、カーラジオから彼女が好きだと言った口ロロが流れてきたら、自分の人生の価値のなさに沁みいる。彼女だけが世界でいい。

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