もともと休みだった土曜日、軽トラにトマトを積んで、岩見沢から高速にのった。バックミラーにはダンボールしか映っていなくて最悪だった。どこかで『中央分離帯』の標識がつづいているのを見て、ユーミンを思い出しながら眠くなり、「音楽聴きたいですよね」と親方に言ったらラジオの音が出るか試してくれたけど、つながったところであまりいい音じゃなかったからすぐに消された。風に煽られて車体がずっとふらついていた。スピードを出すのは楽しい。でもせいぜい80キロオーバーくらいしか出せないから毎秒抜かされていく。

札幌にある生鮮センターに着くと、トマトを降ろしたあとに倉庫内を見てまわった。北海道の各所から届いた野菜がコストコみたいな棚に置かれていた。その中のミニトマトを管理の人は見せつけるようにして口に入れ、すすめてきたから一つもらったけど、犯罪に加担したみたいでいやだった。

帰りぎわ、彼は「またこの子に運転させるの?」と言った。「かわいそう。帰りは運転してあげなさいよ」
「僕が運転する?」と親方。
「うん」と私。

サングラスをかけた親方は、右折の道を「チッ」と舌打ちしながらまっすぐ進んだあと、農園と反対方面の高速道路にのり、料金所で思いきりエンストした。晴れた日の昼下がりは眩しい。眠くなって目を細めていると「寝てもええんやで」と彼は言った。「目、つぶっとき」えー、いいな、その言葉・・・と思い、頭でくり返しながらうとうとしていたら1時間くらい眠っていた。岩見沢のサービスエリアで降りたときもまだ寝ぼけていた。親方はソフトクリームを買ってくれた。日差しの当たる小さなフードコートの窓側の席で「おいしいな?」と彼は言い、あっという間に食べ終えるとじっとわたしの顔を見た。

そこを出ると、親方は大きなあくびを続けて4回くらいした。交代しなかったことをすこし反省したけど完全に孫の気分だったからしょうがない。晩飯なに食べたい?と彼は言い、滝川の駅前に焼肉店がたくさんある、と話したそばからインターチェンジを通り越したので別の町に行くしかなくなった。焼肉店では最後にソーセージを注文した。でもうす切りにされたやつが出てきたので、いちばんおいしいところが損なわれていた。もうそれはソーセージじゃない。ハム。

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