風に吹かれる町

帰り道が追い風だとうれしいけど、行きも帰りも向かい風ってことがある。横から吹いてくる風もきつい。ここのところ、毎日が風との戦いだった。帽子は飛ばされそうになるし、自転車は前にすすまない。今日は言葉が飛ばされていくのを見た。このせわしない風はなに。街に吹く風というよりも、風が吹く町、風に吹かれる町だ。百歩ゆずって太陽は味方だとしても、風は完全に敵にまわしている。

昨日のメモ。

熱いシャワーを水道代にかまわずゆっくり浴びてもいい、と思える日があるけど、今日はぎりぎりそれに値しているはずだ。朝いちばん、「山の上」と呼ばれている畑に歩いていき、粘土質の土をかぶったマルチシートをめくった。風が強くて、はがすとすぐに飛んでいく。まるで天女の羽衣だったけど、別にきれいってわけじゃない。土を掘り起こしていく重機のあとをカラスが追っていた。表に出てくるミミズを狙っていたらしい。

景色からひとつの白が失われて、雪どけ水も残り少ない。春は遠のき、夏のきざし。それでもまだ桜は咲いていないし、自転車に乗るには手袋がいる。1日の空の移り変わりが果てしない。この季節をいったいなんと言う。生活のはじまり、農作のはじまり。ここは4月の北海道。

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