なでしこが、なでしこらしくなかった理由

先日、生でオランダとブラジルの女子サッカーを観て感じたのは、チームとしてどこを武器とするのかを共有していた事。例えばオランダは、サイドチェンジ。ミスしてもいいから、30mぐらいの逆サイドへのパスを多用していた。これにより、相手は視点を変えられ、守備陣は混乱する。オランダは優秀なサイドアタッカーと30mぐらいのパスを正確に出せる選手がいるから可能なチーム戦術だった。結局はアメリカにPKで負けたが、3点取って苦しめた。

ならば、なでしこはどうだったのか?これといって、なかった。なでしこらしさとは、チームとして何をするべきかを共有し、実行できる事だったはずだ。それが強みだったし、女子サッカーの流れを変えたものだった。

だが、なでしこはそれが見えなかった。チームとしてどこでプレスをかけ、ボール奪取するのかがまるで見えないし、奪ってからの攻撃の形もないから、スピード感がない。回すだけのサッカーになっているし、観ていて、戦ってない様に見えるのだ。

女子も男子も現代サッカーにおいて一番重要な事は、ボール保持者へのプレスだと思う。Jリーグと海外リーグとの違いで言われる部分だが、海外だとボール保持者に対しては体を密着させるぐらいに、プレッシャーをかける事を求められる。そうしないと、まず相手が崩れないからだ。

だが、なでしこは、抜かれる事を考え、プレッシャーが中途半端になる。さらに、攻守の切り替えも遅いから、ボールを奪えないし、相手優位に進む。ただ守るだけになるのだ。これは監督の戦術不足と選手に意識の違いだと思う。岩渕や長谷川などの海外組は、リスクを負ってプレッシャーをかけて戦っていたが、一番その部分で必要なボランチにその要素がなかった。だから、戦っていないし、奪えない。守備ラインも下がる。

加えて、スイッチを入れる縦パスもリスク回避のため、少なくなり、攻撃も停滞する。かといって、個人技で打開も出来ない。観ていて戦ってないと思うのは、その停滞が理由なのだ。

ならば、解決策はどこにあるのか?澤が経験が必要と言っていたが、そう思う。海外組がもっと増える事。加えて、リーグの質も上げる事。これは監督だけではなく、個人の意識の違いにある。男子サッカーだと、Jリーグと海外リーグでは違うスポーツとよく言われるが、女子もその課題が露出してる。明らかに海外組と国内組のプレッシャーの掛け方に意識の差があった。加えて、勝負に行く姿勢もある。シュートの意識やサイドを深く抉るなど、積極性もそうだ。オリンピックで男子サッカーが躍動してるのも、この部分が大きい。オーバーエージの三人に加えて、久保、堂安、板倉、中山、三好は既に海外でレギュラー。だから、あたりに行けるし、リスクも負う。澤がいた頃は、リスクを負って戦う姿勢があった。だから、感動した。それが繋がってない事が何より課題だし、それを復活させる事が出来るのは、リスクを負った経験をするしかない。佐々木監督が優勝は早すぎだかもしれないと、インタビューで言っていた事があったが、そのツケが今来ているかもしれない。


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