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夏陰のhallucination

2023/9/16
 「そうか、全て幻だったのか。」そう悟った時には全てが遅かった。
 暦のままに夏の魔法は解け、そこには抗えない現実だけが残った。
 秋夜に隠れた陽を追いかけるように川沿いを歩いた。高い空が何処か怖くて俯き加減だ。耳元で鳴る音楽のBPMに合わせてみようにもどうも歩は進まない。やけに体が重い。久しぶりに泣くかと思うがその勇気も出ず家にも帰る気も起きない。こんな状態になった経緯を説明するのも億劫だが、端的に「ストレス」と云うもののせいである。薄れゆく良心を横目に、これまでのことを反芻する。
 
 ストレスを抱えること自体人間として不自然は無いのだが、問題はその出処だ。大抵それは周りの環境や人間によるものだ。だが厄介なことにこの場合僕という人間そのものが最大のストレッサーだ。自己肯定感の低さが悪さしている事なんて分かりきっているが、それに甘えて生きてきた。
 人が僕を評価するときは大抵二つに分かれる。「いい人」か「気持ち悪い人」だ。経験上僕を知らない人間ほど僕を「いい人」だと言う。そういうときは馬鹿だと思いながら作り笑いを返す。一つ言えることは、僕を「いい人」と言う人間には、僕は心を許さない。
 書き始めて再認識したが、僕は恐らく人より歪みが多い、矛盾の塊のような人間である。人に伝える意思はとうに挫けているので温かい目で見てほしいところ。

 突然だが、「人に嫌われない」これが僕の一つのポリシーだ。だからこうやって上部の優しさを振り撒き生きている。ただ、腹の底で何時も他人を見下し、心を擦り減らしている。
 分かり難いだろうから、一つ例を挙げよう。僕はクラスの“メンタルケア”要因の地位を握っている。周りの女子は、僕に相談を持ちかける。「彼氏から嫌われたかもしれない」真剣そうな顔でそんなことを訊いてくる。正直どうだっていいと思っても決して顔には出さない。思考を一応巡らせ、取ってつけたような回答をすると「考えもしなかった」などと言って満足そうに消える。これが日常だというのだから困る。
 紙一重で嘘のない回答を心掛けているつもりだが、これは自分にも相手にも気に食わない。迂闊に気持ち悪い自分を出せなくなる矛盾、人助けをする気もないのでただ自分の首を絞めているだけ。優しくしてもらっているのに私には何もしないんだね、そんなこともわからないのか本当に馬鹿だ、いちいち話しかけるな。こんな行き場のない感情は溜まるばかりで、吐き出すことを知らない。
 
 この矛盾を生むのが「嫌われたくない」の思いだ。自分を出せば嫌われる、離れられる、また孤独になる。これは過去(中学校の頃であったか)の負の遺産だが、吹っ切ることはいまだに出来ていないからそんな想像を止められない。だから「いい自分」をなんとか取り繕う。そうやってなんとか自分を保っている。
 ただし、平常時に限ってだ。

 夏休みを今振り返ると本当に笑えてくる。まんまと夏の罠にかかっていた。そしてあろうことかそのまま新学期を迎えてしまった。学校の喧騒や雑踏から解放されて羽を伸ばしていた僕は、自己肯定感が無秩序に上昇してしまっていたのだと今になって思う。僕は他人とうまくやっていたし、他人は僕が好きで僕も他人は好きなんだという思考の逸脱・飛躍が顕著に見られていた。そして自己嫌悪もなくなり、真っ当な人間に近付いたのだと錯覚していた。自分は変われたのではないかという淡い期待を胸に始業式を迎えた。
 
 学校が始まり、有象無象共と関わる機会が増えると、夏の前と何も変わらない自分がいてとても驚いた。そんなある時、身体に謎の痛みが走った。急に運動したからだろうかと思うがどうも様子が変だ。どうやら原因はストレスらしい。大体これまでの自分はストレスの前に精神が終わりリセットされるという流れだったが、夏のせいで心が空元気を持て余していて、ストレスだけが過剰に溜まっているということがわかった。夏に冒された僕は始め、ストレッサーの正体を見抜けずにいた。そしてその発散法を見つけるために奔走した。友人や教師、知り合いの柔毛論の権威など、様々な人に尋ねるもどれもいまひとつだった。
 
 しかしある時ふと気がついた、それは有象無象についてである。
「五月蝿い!黙れ、あぁ、そうか、嫌いだ、僕はこの人たちが嫌いなんだ。……」そう考えた時、僕の中で何かが切れる音がした。夏の魔力は呆気なく消え失せた。
 そうだ、僕は夏前と何ら変わらない、醜悪な中身を持った救いようのない人間で、自身が嫌われたくないがために嫌いな人間を好きでいようとしていたのだ。そして勢いそのままに自己嫌悪に走った。もう何もかもが耐えられず、全て心に堪えた。何も変わっていなかった自分、ストレスによって明らかにされる本性の片鱗、さらに増える負担。その全てが、僕を前に進める力を阻害し、奪い去った。
 これまでの自分の行動が悉く裏目に出て、とても耐えられるものではなかった。が、実害が出過ぎてしまっていた。Absorb の一件を皮切りに、本来留めておくべき、唾棄すべき一面が見事に露呈していた。もはや言い訳もできない失態である。今思えば自己嫌悪の種を自分で撒き続けていたのかもしれないと思っている。

 かくして、今に至っている。天井が迫ってくるような気がして縮こまる。窓の外の光をカーテンで遮り、真っ暗な中で画面を叩く。潰れた連休を無念がる余力さえも最早残っていない。
 いい夢を見ていたんだなと、幸せだったのかもしれないとも思うが、ここまできた以上もはや取り返しがつかないのはせん方ないことだ。唯一の望みも事実上潰えているし、人に頼ることは最早出来ない(嫌われているとさえ思う)。病まない、病まない、病まないと言い聞かせてきたが、どうやら高望みだったみたいだ。
 
 全ては、夏の夢幻だったんだ。 あぁ、何も変わっていなかったんだな。
 
 ここから先はいつも通り聞くに耐えない自己嫌悪がどこまでも続いていくだけなので、この辺りで筆を置こうと思う。

あとがき

きっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっしょ!

だっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっさぁあ!

とりあえずここまで読み進めていただいた人に無条件の謝辞を述べたい
拙い文章やったけどどうもありがとう

見ての通り限界ですね、はい

書こうと思って始めたらたった2時間でこの有様って、ほんとどうかしてる

最早小説の体もなしてないしな、何だったんだこの時間は

みんな健やかに生きてろ!

人頼れるうちは頼っとけ!

こんなふうになりたくねぇだろ!

てかこれどないしたらええねんほんまに

ただの塵

同じ病み方をしてる人間がもしいたらなんか意見交換とかしたいな

でもまあとりあえずいつも通り抱え込んで病むだけやな、火曜に復活できるかしらんけど

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