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あの戦争

 また暑い夏がやってくる。コロナ騒ぎも少し落ちつき、例年通り「あの戦争」産経出版社刊をまた読み始めている。

 2001年以降、終戦記念日(8月15日)までの約2ヶ月間、いろいろな情報で「あの戦争」を振り返る。もう20年間続けている私の夏の日課である。

 私は昭和28年(1953年)生まれで、大平洋戦争を経験していない。また1960年~70年代の私たちの学校教育はまさしく受験用であり、日本史は大平洋戦争の開戦と敗戦に至る状況を、また敗戦後、民主国家として経済成長してきた事を簡単に伝えるだけで、本当の事は何も教わっていなかった気がする。父は元軍人だったが、私が15歳の時に他界し、戦争の詳しい話を聞くことはなかった。

 一般的には、日本が無謀な戦争に突入し、多くの国民を犠牲にし負けた戦争ということであろうが、戦争はそんなに単純なものではないだろうと思っている。「あの戦争」を時系列に事実で知りたい。何故?何のために?という自分の疑問を少しでも解き明かしたい。私なりの「戦争観」を持ちたいと思っていたところに「この記録」に出会った。

 産経新聞の連載をまとめたものであるが、昭和16年12月から昭和21年6月までの各日の出来事を「日誌」という形で、また知名人の「日記」、またいろいろな犠牲者の逝去を「鎮魂」という形で紹介し、一週間毎に「記録」という形でコメントしている。このコメントのみに記者の嗜好が見られるが、全体として事実を刻々と記している。

 二人の記者が掘り起こしたものらしいが、「あの戦争」のありのままの姿を伝えた力作だと思っている。
特にいろいろな人の「日記」、詳細な犠牲者の「鎮魂」は秀逸であり、深く考えさせられる著述が多い。

 戦後75年を経過し、「あの戦争」と言えば、靖国、慰安婦問題、あるいは長崎、広島への原爆投下の日、終戦記念日に話題になるくらいであり、「あの戦争」そのものが語られることが少なくなっていると感じている。

 戦後生まれの私たちの価値観では「あの戦争」を論じることは余りないかも知れない。しかし私たちの幼い頃は零戦等が活躍する戦争漫画もまだ多くあり、戦争の匂いが色濃く残された世代でもある。

 310万人の犠牲者を思うと、誰かが、次の世代に「あの戦争」の事実を語り継がなければとの思いが強くなる。稚拙ながらその一人になれればと思っている。

今年の夏も「あの戦争」の5年間を丹念に丁寧に読み込んで、自分なりの「あの戦争」の真実を高めていきたいと思っている。

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