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21才の夏(5)

綾は翔と同じ歳で、尚希の2つ上だった。合コンの会場は立食パーティーの形式をとっていたので、女性からもアプローチし易かった。綾は尚希の後輩に、紹介して貰うと、営業がとても上手な事を褒めて、営業成績がどうしたら良くなるのか聞いたりして、尚希の自尊心をくすぐった。尚希は綾のスタイルの良さに、身長高いんですねと言いながら、小学校の先生って、僕も覚えているんだよなあと、一年生の頃の担任の話をしたりした。綾も保健の先生ですから、皆さんの事良く見ているんですよと尚希にも声を掛けた。綾さん、俺に優しいなあ、年上の女性に弱いんですよねと伝えた。

綾は仕事柄、お酒を勧めるのが上手で、尚希もカクテルをグイグイいってしまい、ふらふらになってしまった。後輩が尚希さんお酒いつも飲まないのにどうしたんですかと気遣う場面もあった。綾は二人で別の場所で飲み直しませんかと誘った。綾はもし、優子の事が気になるなら、断るはずだと思っていたが、尚希は明日も仕事なんだと綾の誘いを断った。綾は残念ですとパーティー会場を後にした。後輩は、尚希にどうしたんですか、あんな綺麗な女性に誘われるなんてもうありませんよと繰り返した。

尚希は後輩に綾さんて、小学校の保健の先生なのと尋ねると、僕は知らないですけど、真面目な仕事してるっぽいですよねと話した。尚希はふーんと答えていたけど、綾さんが水商売をしている事を見抜いていた。尚希は仕事柄、他人の嘘を見抜くのが得意だった。確かに化粧とかは地味なメイクをしていたけど、彼女が使っていたオーディコロンはとても高価なもので、学校の先生には似つかわしいものだったし、スマホの受信を5分置きに確認するのも、営業マンの尚希には客商売をしている人にしか見えなかった。

彼女が水商売をしていると確信したのは、とてもお酒に詳しくて、尚希が本当はお酒が飲めない事も、気づいていて、無理はしないで下さいねと気遣ってくれた事だ。尚希も天邪鬼な所があるので、逆に心配させない様にとお酒を飲んでしまったのだ。でも分からなかったのが、嘘をついてまで、俺に気のあるふりをして、飲みに誘ってきた事だ。綾さんは美人でモテる事が俺にも分かる、無理に年下の俺を誘う必要もない、合コン会場には、俺より頼りになる男は沢山いたのだ。尚希も直感的に何かおかしいなと思って、彼女の誘いを断った。

尚希はこの事を直ぐに、優子にメールした。今日騙されそうになったんだよねと、優子が何の話よと言うので、すごい美人がいて、言ってる事が嘘ってバレバレなんだよね。それでどうしたのと尚希に言うので、ちょっと怖くて飲みの誘い断ったよと伝える、優子は、あんたらしくないね。最後まで確かめなかったのと尋ねた。なんか裏にヤバい人が居そうな空気がしたんだよね、優子は尚希はそう言う所、理解が早いよねと答えた。

綾は翔に気づかれたみたい、バレたかと翔は言う。綾に嫌な想いをさせてごめんなと、髪を撫でながら、唇にキスをした。綾はやめてよと言いながら、嬉しそうににこっと笑った。綾は尚希って、頭のいい男性ね。優子が好きになるのも分かるわと答えた。翔は本気になるのは辞めてくれよと綾に伝えた。綾は私はあなた以外に興味はないのと話した。翔は尚希がダメなら、優子にも同じ様に罠を仕掛けてみようと思った。

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