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世界にただ一緒にいる彼(2)

聡一と航が2週間のサマーキャンプを終えて帰ってきた、まさみは子供達喜んでくれた?と尋ねた。サマーフェスの特別合宿で子供達に楽器を教えたのだった、子供達って何歳ぐらいの子?、中学生、吹奏楽部の生徒もいたよ、バイオリンとか教えられるの、ロックフェスだからギターとかキーボードやらドラムとかだよ、FM東京の内藤さんがまさみはもう歌わないのかって言ってたぞ、舞台でいつも歌ってるじゃない、知らないのかな?見に来てくれれば良いのに。

まさみと聡一と航が中学生の時に生徒会でバンドを組んで参加したフェスで内藤さんとは知り合って、今回のサマーキャンプにも彼から誘ってくれたのだ。本当はまさみ目当てみたいだったけど、内藤さんはまさみに音楽の才能があると思っていて、高校時代にも何度か声をかけているのを航は知っていた。航はまさみを保育園の頃から知っているので、まさみがアイドルの様な真似はできない事を分かっている。

サマーキャンプを終えて、航が大学の学祭でするイベントの打ち合わせをしている時に、静にあってまさみが夏留学に興味を持っている事も聞いていたのでその事も気になっていた。まさみは今、自分が唄を歌いかどうかも分からないのよねという、舞台では歌っているのに?と航が聞く、内藤さんのいう様にバンドで歌うのとは違うのよ、俺達はいつでも準備出来てるよと話した。

航は夏留学に興味があるの?と尋ねた、1週間前まではね、最近おかしいのよ、気分でコロコロ変わっちゃうの、昨日まで考えてたことが今日には関心がなくなる時もあるのよ。まさみは聡一はどうしたの?、北海道に写真撮影に出かけてる、美瑛と富良野を回るらしい、高校の時の友達とも会えるって喜んでたよ。聡一は高校生活を北海道で過ごした、雄大な自然の中で生活してみたかったからだ、高校一年生の時には日本最北端にある利尻島まで3人で旅行した、聡一が高校を卒業して俺たちと同じ大学に進学したときは驚いたけど、俺はてっきり北海道に残ると思っていたからだ。聡一の夢は写真家になることで、東京に戻ってからも時間を見つけては写真の撮影旅を続けているのだ。

航は小学校の頃から、タレント活動を続けていて、3人で会話劇もしたことがある。聡一が本を書いて、俺とまさみが舞台で演じた。大学でも演劇部に所属していて、学祭でもイベントをしようという話になっているのだ。まさみは航にいい返事をしていなかった、まさみも舞台をするかどうか悩んでいたのだ、本当の事を言うと自分を表現する事に興味を失っていたのだ。航も薄々それに気づいていて、聡一が3日後には脚本を仕上げてくれるはずだから、一度読んでみてよと伝えた。

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