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21才の夏(13)

刑務所に3年服役していた男の名前を大吾という。刑事は大吾に恐喝による自殺ほう助の罪だったよな。へい。検察の言う事を全て認め、情状酌量の措置もあって、務所での態度も良かったらしいな。へい。刑事は事件の事で何か隠している事はあるのか。何もないでごんす。お前は暴力組織に雇われていただけで、組員ではなかったんだよな。刑事は大吾を当時取り調べている時と変わらず、この会話にもそんなに意味があるとは思えなかった。刑事は大吾に、翔の弟はお前が恐喝したから自殺したんだよな、大吾はへいとだけ言った。

刑事は大吾に今、何してんだ、組織にお世話になっています。刑事はまだ繋がっていたのか、余り深入りするんじゃないぞ、かたぎでいるのが一番だ。今度犯罪を犯したら、長い服役になるぞ。刑事は大吾が事件の真相を知っていたとしても、本当の事を話せる訳ないな。もしかしたら事件の時も利用されただけかもしれないな。だとしたら、俺に話している事も嘘八百かも知れない。

刑事は半信半疑ながら、大吾のレポを優子に見せた。優子は何も分からないって事よね。私だったら今の組織との関係を調べるわ、大吾はきっと何かを隠しているはずよ。私の想像だけど、大吾をひもとして扱っている組織は、翔とも繋がっていて、今の翔の仕事の裏には暴力組織と絡んでいる、大吾もそれに一枚噛んでいて、今しゃばで飯が食えるのも、翔の仕事を手伝っているから。その関係は事件当時から繋がっている。やっぱり、弟の死と大吾、翔の関係性はあって、暴力組織はそれを背後から見張ってたのよ。

優子の話に、良くそこまで想像が膨らむな、当時お前も高校生で酷い目にあったんだろ、これ以上首を突っ込めばあの当時の二の舞いだぞ。知らなくて良い真実だったある。優子はいい加減して、私はあの事件のせいで喉の奥に魚の骨がずっと突き刺さった状態なんだよ。最近じゃヒリヒリして、生きた心地もしやしない。刑事はお前が確かめたいのは大吾と翔の関係だな、今の仕事について話を聞かないとな。これはしばらく時間がかかる、直ぐに済む話じゃない、優子に探偵費用持ってきたかと尋ねる、優子は取り敢えず用意できたのはこれだけだからと50万円を大判封筒に入れて渡した。


大吾は暴力組織に言われて、翔の店の用心棒をしていた。翔は自分の為に働いてくれる男を側に置いていた。大吾もその一人だった。暴力組織からは店を出す時に土地の所有権や資金繰りの事で世話になった、翔にとって銀行の様な存在であり、実際には歌舞伎町で生きていく為には随分と役に立ち助けられている存在である。翔は大吾には借りがあった、双子の弟を始末する時に、恐喝して貰ったからだ。翔は高校の時にはパパ活斡旋の元締めとして弟を利用して、金を稼いでいた。しかし弟は剃りが合わなくて仕事の事で揉める事がよくあった。翔は大学生になりたかったので、高校時代は表立って仕事をしていなかった。その事も弟には不満だった。しかし暴力組織との関係性は、翔の方が上手かった。それに反発した弟が組織から独立して自分の組織を作ろうとしたのである。弟はまだ17才であった。

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