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21才の夏(11)

尚希が弟さんの事覚えてる?、誰の事、翔の双子の弟だよ、綾さんから聞いたよ、翔の弟の事調べるんだって、優子はそんなことより、尚希に綾と付き合うのか尋ねた、尚希は多分ねと誤魔化した。優子はいつものやつかと納得した。尚希の女癖を見ていて、特定の子を作らないのはいつものことである。尚希とは高校の頃からずっと一緒にいるけど、彼が真剣に女性と付き合ったことを見たことはない、そして最後にいつもお前だけだからというのだ。だから優子にも彼氏がいた事がない、いつだって最後は尚希の元に帰りたかったからだ。そういう意味では二人は両思いだったのかもしれない。尚希は最近、家に帰ってこない、優子はおそらく、綾の所に入り浸っているのだろうと思っていた、優子はいい加減、尚希に私じゃなくてもいいから、一人の女性を真剣に愛して欲しかったのである。


優子は翔の弟の事を考えていた、高校の頃の話だけど鮮明に覚えている。本当に嫌な男だったのである。何度か性的な関係も求められた事がある。そういう意味では女に手を出さない翔の方が好感が持てる。しかし、翔が弟の事をそんなに大切にしているとは知らなかった。弟から翔の話を一度も聞いた事がなかったからだ。尚希に弟の事を聞くと、喧嘩がめっぽう強くて、頭より身体を使う方が好きだという話だ。優子はそもそも、パパ活という制度をよく、弟が作り出す事ができたなと思う。優子は裏に暴力組織があるのは薄々気づいていたが、大人が高校生にそこまで要求するとは思えない、弟の自主的な活動があったのなら、弟と別の有力な存在があってもいいのではないかと思うのだ。もしかしたら翔が関わっていたのではないかと思うのだ。翔は悪知恵が働く男だ。今でも弟の事を何とでもいう事ができるはずである。翔の本質は他人を利用するところにある、自分の為に働くもの以外は側に寄せ付けないのである。


優子は一人の刑事と連絡を取った、高校の時以来である。スマホの連絡先に電話を入れてみた、相手は出なかったけど暫くして、連絡があった。優子は今も警官しているのと尋ねた、いいや独立して探偵事務所を開いているという。優子は調べて欲しい事があるんだけどと話す。刑事はどんな事、優子は私が高校の時、一時期パパ活していたの覚えている。ああ、俺が処理した事件だから報告書も書いたよ、あの時翔の弟が亡くなったんだよね?、翔か懐かしいな、あいつ元気にしてるの、あの当時から悪巧み出来る子だったから何処かで一人前になっている気がするな、私、今翔のキャバで働いているの、へー、それでどうしたの、翔の弟の事調べていて話を聞かせて欲しいのよ。刑事はあの件には顔を突っ込まない方がいいぞ、確か裏に暴力組織が関係しているはずだから、優子は本当に弟の死は暴力組織のせいなのかしら、どういう事だ、本当の黒幕は別にいたんじゃないか。確かあの事件で一人の男がしょっぴかれて、服役したはずだぞと話す。優子は今その男はどうしているのと話す、刑事はこれ以上はここでは話せない、もしこれ以上知りたいのなら俺が調べてやってもいい、女が顔を出せる話じゃないから。

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