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21才の夏(3)

優子は尚希には黙っていたが、悪い男と縁が切れないでいた。その事は尚希には黙っていた。悪い男の名前は翔と言う、優子を高校生の時にパパ活させたのも翔だったし、尚希に救われたものの、腐れ縁は続いていた。翔は暴力グループとの付き合いがあったが、大金を稼ぐ為に利用しているだけであった。翔は優子の2才年上であったが、高校生の時には、社会で遊ぶ悪い大人と繋がっていて、優子にも甘い話を持ってきていたのである。翔は尚希の存在を知ると、一度は身を退いたが、優子が男関係にずるっとしている事は確認済みだったし、まともにOLとして働けない事を見抜いていた。

しかし、尚希は思いのほか、真面目な男だったので、むやみやたらに優子に手を出す事はしなかった。でも翔の頭の中には、優子は金になると言う想いがずっとあった。翔が20代でやりたい事は、悪い事をしてのし上がる事だった。しかし、暴力の組員になることではなくて、表の顔は実業家として稼ぎたかった。裏には暴力グループとも繋がりがあって、人の良い馬鹿を利用したかったのである。尚希は不良ではあったが、正義感の強い男で、翔にとって目の上のたんこぶであった。優子と別れてくれないかと思っていたが、同棲を始めたと聞いて、優子の心の隙間をついて、悪い道に勧誘できないものかと考えていた。尚希が営業職として、高成績をあげているのを知りやれやれと思った。

翔自身、何故優子にそんなにこだわるのか、自分でも分からなかったが、高校生の時も優子が不幸になるのが嬉しかったのである。それが尚希の出現により少しはまともになっているが、優子の本質はふざけていると見抜いていた。だから人の良い馬鹿であって、翔が利用すれば金ズルになると読んでいた。どうすれば尚希と引き離す事が出来れば、優子を明日からでも手中に収める事が可能だと考えていた。そんな折、優子がOLを辞めて、実家から離れて一人暮らしを始めた。仕事も夜の仕事に変えて、ブイブイいわせていると知った。同棲も始め、二人は付き合い出そうとしていたので、翔は罠を仕掛けてみる事にしたのである。

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