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21才の夏(15)

優子は西新宿にある、刑事の探偵事務所を訪れていた。優子は興奮していて、大吾が私に翔が弟を始末する様に指示を出したのだと話したのよ。刑事はボイスレコーダーに録音したのか、私にそんな時間の余裕はなかったわ、とにかく大吾本人の証言が必要だ、大吾が何処にいったかわからないのであれば仕方がない。例え、警察が動いてくれても証拠不十分になるだけである。しかし翔は本当にやばいやつだな、弟を殺すなんて。優子はこの度の事件、翔のこれ迄の言動を許す事は出来ない。最後まで見届けるつもりよ。諦め切れないの。刑事は優子の気持ちはよく分かる、でも状況は翔に有利に動いている、全ては彼の手の中にあるのだ。


尚希は綾の元に入り浸っていた。尚希は綾の事が特別な女とは思っていなくて、今まで尚希が女と付き合う時にした良い加減な対応を見せても、不満は言わなかったし、いつも信頼してくれていた。尚希にとって都合のいい女だったのである。尚希にとって、翔の影がちらりちらりとする所も良かった。男は男の影が見えると興奮するのである。尚希はキャバの店に行ったり、綾のマンションに押しかけたりしたが、時々翔と鉢合わせする時があったが彼は何も言わなかった。しかし、何となく彼に気に入られているのではないかと思うのである。ある日、綾から翔の為に働いて見る気はないかと声を掛けられた。綾はもう分かっていると思うけど、私は翔に子飼いにされているの、翔も自分の為に命をかけてくれるなら、対等に見てくれる男よ。世間ではいい噂はないけど悪い男じゃないわ、貴方は腕っぷしが強いからボディーガードをやってみない。尚希は優子のこの事件を最後まで見届けたいという言葉が気になっていた。だから綾の言葉に納得したのである。尚希も夜の世界に入っていった。翔はこれで尚希も利用する事が出来たのである。


優子はキャバをやめて、東京を離れ、地元に戻っていた。歌舞伎町での暮らしがなくなれば東京に居る必要もなかった。バイトをしながらぶらぶらと生計を立てていたが、優子の母がいい歳をしてみっともない、地域の目もあるからと遊んでいる優子にお見合いの話を2、3持ってきた。優子も興味はなかったが、お見合いの一人が高校時代の翔の友人だというので、会ってみたいと思った。実際に会って見ると、真面目な男で、面白みを感じなかったが、翔の名前を出すと、翔ちゃんなつかしいなあ、今東京に居るらしいよ、来月の同窓会で高校以来に再会するんだ楽しみだなあと話す。優子はあの人殺しがと思った。優子はこの男と結婚して、一男一女に恵まれた、専業主婦になる事が出来た。彼女にとっては十分に満足できる家族生活であった。

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