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地球最後の日

 世界に蔓延している、細菌兵器の影響をTokyoも受けていた。ゴーストタウンの様になっていて、地方への移住が始まっていた。東京に集中していた人口も政府の方針により分散化が進んでいる。同時に進められていたのが、月にある日本ミュージアムへ日本人が生活拠点を移すのである。何故この様な活動が行われているかの説明については、その当時の日本人の理解を超えている所があるが、欧米に右にならえの政治方針を打ち出している日本政府に疑問を投げかける事が出来る民間人は日本に存在していなかった。その第一陣の輸送の日程が決まりつつあった、その人選はマイナンバーカードによる抽選に委ねられたのだ。

 僕の祖父は、その素晴らしいチャンスに偶然当選して、家族で月に移る事が決まった。来週に大型宇宙船で輸送が決まった翌日、地球最後の日を描こうと、明治からある家の墓に足を運んだ。家の墓は、中学校の山手の丘の上にあり、辿り着くには森の中を移動する必要があった。森の先には湖があり、祖父が訪れた日には天候も良く、朝日がキラキラと湖に反射した。祖父は墓に続く森の道から先に湖が見える山路を地球で最後に見た景色として絵画に描いた。それは、ありきたりな日本の田舎の何処にでもある風景だった。

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