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方丈記私記 堀田善衛 1971年

堀田善衛は1945年3月10日に東京大空襲を体験し、同月24日に上海へ出発するまでの間、鴨長明の方丈記をほとんど暗誦出来るほどに読みかえし読みしした。方丈記には、安元3年、西暦1177年4月28日の京都の大火が書かれている。

安元3年の大火のとき長明は25歳であり、治承4年4月に大風と6月の福原遷都は長明28歳のときのことである。治承5年(1181年)7月に養和元年に改元され、翌年の5月に寿永と、またまた改元されたが、この2年は怖るべき大飢饉・悪疫流行の最悪の年であった。養和の大飢饉の悲惨の次に、地震のことが来る。

1945年に27歳であった堀田善衛は、方丈記が実体をそなえたものとして迫ってきた。
「古京はすでに荒(れ)て、新都はいまだ成らず。」

2020年から続いている世界的なウイルス感染のために生き方の見直しが迫られている昨今、感慨深い本だと思った。


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