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グローバルとの出会い

初めてのクルーズ体験
「QE2(クィーンエリザベスII世号)の世界クルーズに乗船してみないか?」年上の友人に誘われた。私は、初めてのクルーズで外国客船の体験に胸を躍らせて乗船したことが昨日のことのように思い起こされる。乗船時に友人から紹介された方はヴァイオリニストの古澤巖さんだった。彼はQE2のオフィシャルアーティストとして船内で演奏を行うことになっているという。サントリーホールでの演奏を聴いたことがある有名な音楽家と一緒に旅行ができるとは思っていなかった。この時クルーズに誘ってくれた友人は古木謙三社長(現在会長)であった。彼は古澤さんの友人であり、彼のコンサートを主催する関係でもあった。今回の旅程は横浜から香港への世界クルーズの一部で、私は当時出版(家業)の仕事をしており、乗船の日まで間に合わなかった校正の原稿を持参してクルーズに参加した。

デッキで校正作業をしていた。
古澤さんとデッキで

最終寄港地の香港は、折りしもその年(1997年7月1日)に、香港の主権がイギリスから中華人民共和国へ返還される時であった。香港に在住した英国政府関係者たちが「ORIANA」号で一斉に香港から英国へ帰国する場面に遭遇した。同じ英国船籍のQE2が入港してきた香港の海上で、お互いが汽笛を鳴らし合い、乗客同士が手を振り合う光景は歴史の一幕であった。
音楽の力
これが私とグローバルの最初の出会いである。船内にはツアーのお客様も乗船しており、私は船内コンサートの時に舞台裏でマイクの調整などのお手伝いをして古澤さんたちの仲間に加えていただいた。QE2の船内の乗客の多くは英国人だった。印象的だったのはコンサートの後、彼が船内のどこを歩いていても「素晴らしい演奏だった!」「あなたのヴァイオリンの音は素敵ですね!」という声をかけてくださる方が多かったことである。一般の乗客の一人だった彼が、演奏後に一躍話題の人となった。音楽の力というものを船上で目の当たりにした。
デッキから眺める広大な海と寄港地の風景の数々は、古澤さんが奏でる音楽と合わせて記憶に残り「旅と音楽」の素晴らしい相性をこの時に体験した。彼の音楽を聴くと、その時の旅の光景が浮かびあがり大切な心の財産となった。
この体験から、様々な音楽家の方々とともに「一期一会」の旅をグローバルで企画することになるとは、その時には想像もしていなかった。

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