見出し画像

サンアントニオのシーワールド

テキサスに住んでいた時、子ども達が小さかったこともあって、遠出した思い出はあまりない。長期休暇の時は、数日かけてでも夫の実家に行くことだけが定番だった残念な頃。

そんな中で、サンアントニオのシーワールドには珍しく泊まりがけで行った。娘の2歳の誕生日祝いということで、特別にお出かけすることにしたと記憶している。

そのシーワールドは、とにかく広かった。目玉はシャチのショー。張り切ってそのショーを見に行き、「この席は濡れます」という注意書きのある辺りの前方の席を陣取った。濡れるって言ったって、水しぶきが少しかかるくらいだろうと思っていた。

シャチは想像通り大きくて、その巨大なシャチと一緒に泳いでみせる人間に感動。しかも、客席に向かってシャチに手を振らせる芸まで仕込んでいた。手を振る先は、まさに私達が座る「この席は濡れます」の席の方。ちょっと水が飛んで来るかもね、などと話していて、シャチが手を振った、と思った瞬間。ザッブーンと水が飛んで来た。一瞬目の前が見えなくなって、息もできないほどの水量で、気づいたら全身ずぶ濡れ。家族全員、ずぶ濡れ。言葉を失って、みんなで顔を見合わせた。笑うしかなかった。娘は半泣き。これ、ただの「濡れます」っていうレベル??

「水を全身にかぶります」とか、「全身がずぶ濡れになります」とか、「水着を着用の人のみ」とか、そういう注意書きにした方がいいよね、と言い合いながら、シーワールドをずぶ濡れのまま歩き回った。その他の動物については、もう全く記憶にない。

シャチが手を振るだけで、起きる水しぶきは大波レベルということと、「濡れます」という注意書きがある場所には座らない方がいい、ということを学んだサンアントニオのシーワールド。あの何も見えず、息もできなかった驚愕の一瞬。テキサスにいた時の数少ない旅行の中で、一番忘れられない思い出だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?