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テネシーのB&B

テネシー州にある日本人夫婦経営のベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)に家族で行ったのはもう6年前。その存在については、人づてに聞いて知った。ネットで調べたら、何人かのブログで紹介されていただけだったけど、良い評判ばかりで、なぜか強烈に惹かれたので、結婚記念日のお祝いに行きたいと夫に頼んで行ってみることになった。

車を運転して向かっていると、何もない田舎にどんどん入って行って不安になった頃、その古くて大きな家は現れた。庭や近所を散歩したけれど、本当に何もない。野原と木々のみ。

経営する日本人の奥さんは、電話の予約の時からとても自然でフレンドリーだったけれど、会ったらもっと自然体で話しやすかった。いきなり離婚経験の身の上話まで始めて、こちらが面食らうほどのオープンさ。

部屋に案内された後、夫が奥さんに呼び出され、何事かと思っていたら、大きな花束を持って戻って来て驚いた。結婚記念日のためにサプライズで花束をあげたいと、隠れて奥さんに電話して頼んでいたらしい。奥さんは喜んで花束を買いに行ってくれていた。こんな何もない場所から、どこまで買いに行ってくれたのだろうと思って、夫の計らいよりも奥さんの優しさに感動した。

にこやかで無口な旦那さんの作る夜ごはんと朝ごはんも最高だった。自分で作らなくても、日本食を夜も朝も続けて食べられるなんて、アメリカで暮らし始めてから初めての贅沢。しかも品数も多くて、すべて美味しい。至福のごはんの時間だった。

残念ながら、今はもう経営していないようだけれど、あのB&Bはどれだけ多くの人達に幸せな時間を提供したことだろう。何も見るものがなくて、やることもなくて、ただおいしいごはんを食べて家族一緒に過ごす時間。こんな旅の楽しみ方もあると発見できた小旅行だった。

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