きりぱり no.1 寒い中

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心地よい場所からは身動きが取れなくなるのはどの生き物も同じだろう。
布団の中を抜け出すのに1日のエネルギーの大半を使ってしまう。
鼻の奥がツンとするような寒さを感じながら布団を後にする。後ろ髪を引かれすぎて後頭部にはもう髪がない。
長島で冬を過ごすのはもう5回目だけど、やっぱり鹿児島市内と比べると寒い。
けど冷たくて澄んだ空気の長島は好きだ。
夏に比べて色が落ち着いた山や海をみると心が落ち着く。
明らかに活動量を落としているのが見て取れる。
だよな、自然で生きる草木はわかっている。
こんな時に元気よく活動できるわけがない。
納得感を持ちつつ、布団に戻る。


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長島近海の魚がぞろぞろと集まってくる。まあ自分たちでぞろぞろ集まってくるわけでは勿論ないのだけれど、ずっと市場を眺めていると”ぞろぞろ”という言葉がしっくりくるなと感じる。
海がシケた次の日は魚が高い。
昨日キロ100円だったものが、今日は800円だったりする。
漁師たちもこぞって船を出す。
だって8倍だぜ。どんなに波が高くてもそりゃ頷ける。
そんな勇敢な漁師たちが早朝にわらわらと魚を携えて集まってくる。
水商売って言葉はこの漁師のスタイルが反映されたものだと酔っ払った漁師から聞いたことがある。
カランコロン
競りが始まる鐘が鳴る。
この魚たちがどんなところに行って、
どんな人に料理されて、食卓に並ぶんだろう。
赤いキャップの大人たちが目当ての魚を取るために目の色を変えて臨む。
朝日に照らされた魚の行く末を空想する。

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「今日は夕陽が綺麗だよ。俺はいつでも見れるから、甲斐くん見に行っておいで」
長島に移り住んですぐの時、片付けが終わっていないのにそう言っておじさんが夕陽を見にいくことを許してくれた。
急いで車に乗り込んでエンジンをかけ、手伝っていた畑を後にした。
どんどん色が変わっていく空に比例してアクセルを踏む足に力が入る。
急げいそげいそげ。
心の中で繰り返しながら丁字路を左折する。20mも進めばもう目の前は海だ。
どんな夕陽なんだろう。今日は何色になってんだろう。
海を遮る家屋が切れたとき、水平線に落ちる太陽を捕まえた。
同じ目線になると動きが早い。ああ落ちる。
目の中いっぱいに移り行くいろ。
これからここは夜になる。


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photo by @ct_chi32

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