おいしい小話

普段あなたが何気なく食べているものにも、だれかの物語があったりして。おいしい小話を綴っ…

おいしい小話

普段あなたが何気なく食べているものにも、だれかの物語があったりして。おいしい小話を綴っていきます。

最近の記事

短編 がんもどきと時々涙

山と田んぼだらけの田舎を飛び出し、上京してから早5年。多くの人が行き交う街の様子にも慣れ、人の流れに身を任せながら職場に行っては帰るだけの生活を毎日毎日繰り返している。 5年前、都会に憧れを抱いた少女は今、理想とはかけ離れた生活をしていた。  夢だったイラストレーターへの道は、上京して丸2年通った専門学校卒業後、いつの間にか見えなくなってしまった。 東京は田舎より家賃も物価も高い。とにかく生活するために、お金を稼ぐことを第一に考えた。 そして、ほどなくしてついた事務の仕

    • 短編 テリヤキバーガーと淡い初恋

      「マクドナルド」という単語を聞くと、とにかく油っぽくてジャンキーな感じを思い浮かべる人が多いことでしょう。たしかに、マックのフードは油マシマシの塩分過多ってイメージ。爽やかさなんて1ミリも持ち合わせていません。 しかし私の場合、思わず背中の真ん中を掻きむしりたくなるような、むず痒いけれど爽やかで、ちょっぴり切ない初恋のようなあの頃を思い出してしまうのです。 食べたいのはしなしなのポテトじゃないの ガヤガヤと学生で賑わう駅前のファーストフード店は、今日も油の匂いが充満して

    短編 がんもどきと時々涙