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鍋の最後

冬はもつ鍋をたくさん食べまして、たれは大根おろしと醤油少しでいただくのが我が家の定番なのですが、一回の鍋で一本近く大根おろしにして食べますので、それはもう大量の大根を消費します。

大根は葉のほうを真っ先に切り落とし、浅めの皿に水を張って切り落とした頭を乗せます。そこから生える葉の新芽をみそ汁の浮身に使ったりするのですが、暖かくなるにつれ葉が生えてこなくなり、一本の長い茎がにょきにょきと伸び始め、ついには花を咲かせたのです。

花の色は株ごとに違っていて、桃色の入った濃い目の紫、薄紫、ほんのり青いような白っぽいものと品種によるのか定かではありませんが、どれも花弁の脈は若干濃い目で紫のインクで描画されたような模様がとても美しいです。

もうすっかりくたびれたようなくすんだ色をして、弱りはてたように見える土台は、それでも花を咲かせる力を持っていて諦めていないのです。やはり人類が滅んでも植物は生き残ると確信するのでした。