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この本は、ぼくのビジネスパーソンとしての前半戦を総括し、会社員20年の卒業論文のつもりで書きました。〜「これからの会社員の教科書」から「終わりに」を無料公開


大企業で出世する人は、まわりの求めることに応えられる優秀な人です。
ただ、そういう優秀な人ほど、年をとってから「他にもっとやりたいことがあったのではないか?」「今の仕事は自分の天職ではないのではないか?」などと考えてしまいます。



優秀な人は、親の期待にも応えてきた人です。中学受験に始まって、大学もいいところに入って、なんとなくまわりが求めるようないい会社に入って。会社に入っても、今度は自分がやりたいことではなくて、上司の期待に応える。すると、見事に期待に応えられるから、どんどん出世のラインに乗れます。もともと優秀だから、エリート街道をひた走ることができるのです。
でも、それはぼくがいちばん恐れている人生でもあります。


なぜなら、そういうビジネスパーソン人生のレールの先では、60歳ごろに社長になります。社長になったら今度は株主からの期待や、社会からの期待に応えなければなりません。まじめだから、周囲の期待に応え続けているうちに一生を終えるのです。


いわゆる日本企業での成功者、財閥系グループの雇われサラリーマン社長などはその典型です。


まわりから見たら「あの人いい人だよね」と言われる。温厚で、部下からも慕われる。よくある非常に優秀なサラリーマンの姿なのです。
しかし、死ぬときになって「俺は本当にこの人生がやりたかったんだろうか?」と思う。死ぬ寸前に思うわけです。「俺、本当はもっと別のことがをやりたかったのかもしれない!」と。失敗するよりも、そっちのほうがぼくは怖いのです。


もちろん、秀才のエリート人生は否定すべきものではありません。そういう人がいないと、世の中は回らない。
それに、最後まで自分ではなくまわりの期待に応え続けることが、自分の喜びになるというのはすごく美しいことです。無私の喜び。尊いことです。ガンジーやナイチンゲールのような生き方も、おそらく無私の喜びだったでしょう。

結局、きみが死ぬときにどう思っていたいかです。

「この業界で名をあげるんだ!」と腹をくくってがむしゃらにがんばるのもいい。もしくは中途半端と言われようが自分が「これだ」と思うことが見つかるまでプラプラし続けてもいい。さきほど言った「30歳で転職が難しくなる」というのは一般論でしかありません。


起業・独立もいいでしょう。カーネル・サンダースは50歳を過ぎてからケンタッキーを作りました。日本地図を作った伊能忠敬も晩年に活躍しました。いろんなサクセスストーリーがあるわけだから、そこは自分で決めるべきなのです。


これだけ情報があふれていると「こんな楽しそうな会社あるんだ……」とか「なんでこんなつらい思いしてこの会社にいるんだろう……」などと思ってしまいがちです。ソーシャル時代だからこその悩みでしょう。他人がよく見えてしまうのです。


ただ、正解は選ぶのではなくて、自分でつかむものです。事前に100%正解がわかるはずはありません。ビジネスの正解は、自分でつくるしかないのです。正解が「与えられるもの」だと思っていてはダメです。
与えられるものの中から正しく選択していればかならずいい人生が待っている。


そんなことは、絶対にありません。


リクルートには「自ら機会を作り出し、その機会によって自らを変えよ!」という有名な社訓がありました。人生はマークシート式のテスト問題ではありません。答えるべき問題自体から、自分で作り、その回答も自由記述式のフリースタイル。それが21世紀のビジネスパーソンとしての正解なのです。
ぼくは、2020年に45歳を迎えます。会社員満20年を節目として、この度、株式会社ZOZOを退職することにしました。


この本は、ぼくのビジネスパーソンとしての前半戦を総括し、会社員20年の卒業論文のつもりで書きました。


幸運にも、素晴らしい顧客の方々や、上司、先輩、同僚、後輩、部下のみなさん、そして職場環境や、家族のサポートにも恵まれたおかげで、大学を出て就職するときには思いもよらなかったような、実にエキサイティングな会社員生活を送ることができました。


だからこそ、新入社員をはじめ、若いビジネスパーソン諸君には、「ビジネスほどおもしろいものはない!」と、改めて、声を大にして伝えたい。
そして、そんな風にビジネスを楽しむためにこそ、この本に書かれた基本的な意識や態度、考え方を早く身に着け、自分のものにしてほしいと願っています。


最後に、私の3人の子どもたちがいつかこの本を読み、ビジネスというこの上なくおもしろい冒険の世界へ旅立ってくれることを願いながら、筆を置くこととします。


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