必要に迫られたときに 英語が出てくるか? 〜田端信太郎著【これからの会社員の教科書】から無料抜粋



昔、3人の子どもと妻と義母、家族6人でバリ島に行きました。
ホテルの予約は、海外の有名な予約サイトでしていました。
朝食をとり、ひとつめのホテルをチェックアウトして、次のホテルに移動しようという午前9時半ごろです。


すると予約サイトのカスタマーセンターから電話がかかってきました。もちろん英語です。ようするに「あなたが今晩泊まろうとしていた部屋がオーバーブッキングで 泊まれなくなった」「代替案として、同等の価格帯で今晩泊まれる部屋を3つピック アップし、あなたのメールに送ってあるから選んでくれ」という内容でした。

仕方なく、3つから選んでメールの返事を送りました。
ところが、問題はここからです。


メールを送ったのが朝の 10時半くらい。ただ、そのあと30分経っても1時間経っても返事が来ないわけです。家族も今晩ちゃんと泊まれるのかどうか心配しています。 「どうもおかしいな」と思って、代替案の中から選んだホテルの電話番号をネットで 調べて、そのフロントに直接電話をかけてみました。

「ホテルの予約サイトから申し 込みをしたはずなのだが、今晩のシンタロウ・タバタのブッキングは通っているか?」 と英語で聞いたのです。

すると「そんな連絡は来ていない」と言われたのです。しか も、そこはもうすでに満室だと言います。そこでピンと来ました。 「なるほど、予約サイトの担当者は、たぶん仮押さえせずに候補を3つ出してしまっ たんだな。それでぼくが選んだ部屋が入れ違いで埋まってしまったから、どう返事し ようか困っているんだろう。間違いない!」と思いました。


そこで今度は予約サイトのカスタマーセンターに「どういうことだ!」と電話です。英語でしたが、怒りもあったので、すごい勢いでペラペラ言葉が出てきます。向こうは「今、調整中だから待ってくれ」と言うのですが、ぼくの怒りはおさまりませ ん。「何言ってんだ! きみのところが3つ出してきて返事したのに、さっきホテル に直接電話したら、そんな予約はそもそも受け付けた覚えはないと言っているぞ! きみは間に挟まって嘘ついてるだろ」と言うと、相手は「うっ」となって何も言えな くなったのです

向こうもまさかそんな切り返しが来るとは思っていなかったのでしょう。
埒が明かないので「これから何を言っても、もうきみたちは一切、信用できない。 そもそもオーバーブッキングになっていたのもおかしいし、こちらはせっかくのリ ゾートなのに、きみとの二時間のやりとりに加えて、これから他の予約サイトで宿も 手配しないといけない。迷惑料として500ドル払ってもらいたい」と伝えました。

結局、予約済み分の返金に加えて、迷惑料として500ドルを払ってもらえることになりました。


人間、必要に迫られると英語は出てくるものです。


こういうときに「いや、英語は話せないから無理」と泣き寝入りしていては、損を するだけです。まず、自分が選んだホテルに電話で直接確認をするくらいはやってみ るべきでしょう。お客さんとして電話するぶんには、ホテルも嫌がったりはしません。


英語を勉強するというのは、こういうときのためにあるのです。
テストの点を取るためではなくて、不当な扱いを受けずに自分の身を守り、自分が やりたいこと、実現したい目的を果たすためです。
よって「スピーキングで 90点取れているけど非常事態のときに尻込みしてしまう 人」よりも「60点だけどダメもとで電話できる人」のほうが海外でのサバイバル能力は高いでしょう。それは語学力の問題というより、ガッツを出せるかどうかの問題。 日本人が言う「英語力」と、海外における「英語力」とは違います。最低限、英語で 読めるレベルが突破できたら、次に目指すべきはこのサバイバル能力だと思います。ちなみに、スピーキングについていえば、発音の正確さは気にしすぎなくても大丈夫です。なめらかに話せなくたって、恥ずかしがる必要はまったくありません。


世の中には「発音が悪い」などといって晒しものにしようとする「発音ポリス」もいます。しかし、こんな英語ができない日本人同士の足の引っ張り合いに参加してはいけません。


英語はあくまで道具であり、手段です。
とにかくやったもの勝ち、使ったもの勝ちなのです。


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