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『フェミサイドは、ある』の仲間たちと座談会①(前編)

 小田急線刺傷事件から1年が経ち、活動記録をまとめたZINE『フェミサイドは、ある』を書いたり、1周年のデモを企画するなかで、去年一緒に活動してくれた大学生・大学院生の仲間たちとまた話したい!と考え、座談会をすることに。日程の都合で2グループに分けて行なったオンライン座談会の様子を、それぞれ前編・後編、計4回にわたってお送りします。

 座談会①の参加者:芹ヶ野瑠奈さん(「日本若者協議会」ジェンダー委員)、山崎彩音さん(上智大学エンパワーメントサークル「Speak Up Sophia」共同代表)、皆本夏樹(「フェミサイドのない日本を実現する会」発起人)

ZINEってどうやって作るんですか?

芹ヶ野:ZINE、夏樹さんの心情が色々書かれてたし、背景も色々詳しく知らなかったのでおもしろかったです。私が日本若者協議会でやっている「痴漢ゼロ」の取り組みも、ああいうふうに書きたいなと思いました。

皆本:ぜひ書いてください。読みたいです。
芹ヶ野:ZINEってどうやって作るんですか?私、書くことはたくさんあるんですよ。私からしたら結構おもしろいんです。 
山崎:絶対おもしろい。
芹ヶ野:何文字くらい書いたらいいんですかね?
皆本:これ何文字書いたんだろう。3万字くらい?
芹ヶ野:それって卒論じゃないですか?
皆本:そうですね。卒論くらいです(笑)
山崎:私たちもサークルでZINEを作ったんですけど、A4の大きい紙に印刷したものをZINEの形に折って、大学のフレッシュマンウィークで配りました。私たちのサークル「Speak Up Sophia」のコンセプトを書いて、英訳したんです。

SUSのZINE1

SUSのZINE2

皆本:すごい。可愛い!
山崎:比較的簡単に作れますよ。小さいやつから始めて、集大成で本みたいなものにしても良さそう。
皆本:いいですね。ZINEって色々ありますよね。
芹ヶ野:私、忘れないようにnoteで書いているんですけど、それは友達向けでちょっとカジュアルすぎるかなと思って。ZINEを作るならどういう感じで書いたらいいのかなって。
皆本:私も結構カジュアルめでしたよ。
芹ヶ野:でもきちんと書いてたじゃないですか。
皆本:私のZINEは、1年弱の間に起こったたくさんのことを整理して書くために、時系列にしようと思って。そしたら日記みたいな方がいいかなということで、「○月○日、〜〜〜。」みたいな感じにしたんです。イ・ランさんのエッセイ『話し足りなかった日』を参考にして、実際に起こったことと、自分の気持ちと、ちょっと分析的なことを混ぜたスタイルで書きました。芹ヶ野さんがやりたいスタイルの本とかがあったら、それを真似してやるのがいいかもしれないですね。あと、私はタバブックスのnoteの連載に練習で書いてアップして、その後に本格的に原稿を書いたって感じです。
芹ヶ野:じゃあやっぱりnoteとかで試しにやってみるのが一番いいですね。
皆本:そうですね。それと、これを作っていて思ったのが、やっぱり記録するのはすごく大事だなって。1年前のデモって結構人いたんですよ。何十人とか、下手したら100人くらいいたんですけど、1年経って、デモの人数が十数人とかになっていて。それくらい、すでに関心ある人にも忘れられていくので、足跡を残すみたいな感じで書きました。芹ヶ野さんが取り組んでいる痴漢対策の活動もすごく意味があると思うので、ちゃんと残ったらいいなって思います。

私、出馬しようと思って。

皆本:山崎さんは最近どうしてました?
山崎:私は法科大学院に行こうかなと思って、今受験の準備をしているところです。弁護士もやっぱりまだまだ女性も少ないので。政治家にもなりたいなと思って色々勉強しているんですけど、もうちょっと立場の弱い人に寄り添うこととか、自分の意見を表明する方法とか学びたいなと思ってます。
皆本:すごい。絶対投票します。
芹ヶ野:山崎さんは何議員になりたいとか決まってます?
山崎:もともと地元に根ざした仕事がしたいなと思っていて。私、福島県出身なんですけど、東北地方ってジェンダーとかいう概念があるのかっていうレベルで本当に酷いんです。市町村長で女性がいないゼロ議会っていうのがほとんどだったり、地元の市議会が何期も無投票で進んでいて、市長もずっとおじいちゃんばっかりだったりするし。それで私、市議会に出馬しようと思って。まだ被選挙権がないので、それまでは地元の市役所の職員になって、市の行政に携わりながら色々勉強しようと思ったんですよ。実家から通ったら出馬するお金も貯まるだろうなって色々考えて、公務員試験を受験したんです。でも学科試験は通ったんですけど、面接で不合格になりました。
皆本・芹ヶ野:なんで??
山崎:おじいちゃんの面接官たち6人に囲まれて「出馬するっていうことは公務員やめるんですよね?」とか「なんでわざわざこんな小さい街に戻ってくるんですか?」って聞かれたんですよ。私、面食らっちゃって。外に出て、海外とか都心の知識を得たからこそ、何が問題で過疎化が進んでるのかとか、なんで若者が戻ってこないのかっていうのがわかるし、それをどうやって地元に落とし込めるかを学びたいし、公の仕事としての価値観とかを学びたいから公務員の仕事を頑張りたいんですって話したんですけど。できることは全部やったし絶対受かると思ってたけど、面接での不合格判定だったので、自分のどこが足りなかったっていうよりも、求めてる人材と違かったんだなって。
芹ヶ野:合わなかったんですね。
山崎:市役所職員になったとしても、市議になったとしても、どんどん高みを目指して働きたいし、街のために新しいことも導入していきたいと思ってそれを伝えたから、そういうところにやっぱり「うーん」っていう気持ちがあって落とされたんだろうなって。でも落とされたっていうことを受けて、「そういうとこだよ」って思ってしまって。ジェンダーのこととか、教育とか、どんどん人口減少が進んでいくのも、結局はそういうところだよ、っていう。でも市議会を目指してたらきっとすごく窮屈だったと思うし、自分のやりたいことができなかっただろうなって。だったら上を目指そうと思って、市議会は一旦諦めて、法律を作る側の国会議員を目指したいなと思ったんです。それで法律についてもうちょっと知識を深めるために大学院に行って、弁護士をやって、いずれ政治家になるのもありかなという考えに落ち着きました。

私は本屋をやりたくて。

芹ヶ野:夏樹さんは今後どういうふうにやっていきたいんですか?
皆本:私は本屋をやりたくて。「エトセトラブックス」は知ってますか?あそこみたいな場所を、いずれは自分も作れたらいいかなって。とりあえずそこに場所があるっていうのがすごくいいなと思って。「セクハラ発言受けたけどモヤモヤする」とか「子育て大変すぎてまじ死にそう」みたいな時にフラっと寄れる本屋をやりたい。芹ヶ野さんは何になるんですか?
芹ヶ野:私は山崎さんと一緒で、政治家になりたいです。
皆本:そうなんですか!
芹ヶ野:今、政治経済学部で勉強してて、大学院で公共政策について詳しく研究していこうと思ってます。そのあと事務所とかで働いて、チャンスを掴めたら出馬したいなと思うんですけど。
皆本:すごい楽しみですね。2人ともなってほしい。


やっぱり仲間がいるのって大きいじゃないですか。

芹ヶ野:でも不安ばっかりじゃないですか?山崎さん。
山崎:三浦まり先生ってご存知ですか?女性の政治参画やパリテ制度の必要性を訴えているアクティビストです。私、大学で三浦先生の行政学ゼミと、先生が共同代表をしている「一般社団法人パリテ・アカデミー」で、女性の政治リーダーを育成する趣旨の講座を何回か受けて、同団体でファシリテーターをしていて。
芹ヶ野:私もいつか「パリテ・アカデミー」で勉強したいなと思ってるんですけど、結構若い方いらっしゃいます?
山崎:若者だけの時もあったし、若者から50代くらいの女性もいる時もあったりとか。いつでも機会があったら参加してほしいなって思います。政治家に必ずしもならなくとも、それを応援する立場でどういったことができるかなとか、自分が今いる場所で発信していくためにはどうしたらいいのかなっていうのが学べるんですよ。SNSで夏樹さんも相当クソリプ受けたと思うんですけど。
皆本:(笑)
山崎:クソリプとかにどうやって対処しながら、選挙でのSNS戦略を学んでいけたらいいのかとかを学べたり。すごいエンパワメントされるし、フェミニストがめっちゃ集まるんですよね。やっぱり仲間がいるのって大きいじゃないですか。今回のフェミサイドのデモとかも「自分の考えてることって間違えてないんだな」とか「この怒りは正しいんだな」って認識させてくれるものって、やっぱり仲間だったりするから。色々モヤモヤとかがあったりした時に「これどう思う?」って聞いたりとか、あと選挙の前に「投票率上げよう」って一緒に行動しました。
皆本:いいな、私も参加したいな。
山崎:ぜひぜひ。
芹ヶ野:じゃあみんなで参加しましょ(笑)
山崎:正しいことしてるはずなのに、自分がどれだけ大きい声で話してても、やっぱり立場が弱いんだなって痛感させられる瞬間ってしんどいっていうか。絶望感や無力感に襲われる時もあると思うんですけど、そういうのを無くすのは難しいけど、私たちが頑張っていけるためにそういう団体があったりしますよね。夏樹さんがさっき言っていた「本屋さん作りたい」みたいなのも、居場所とか仲間とかってめっちゃ大事だなって思います。
芹ヶ野:おもしろいですね。私も気候変動系で色々活動やってて、横の連携が日本はなんだかんだ薄いなって感じてて。連携するのってすごい大事じゃないですか。だから日本のフェミニストたちもうまく連携できるといいなと思ってたんです。

次回はこのメンバーの座談会の後編をお届けします!


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