見出し画像

親/子の影響#3 (仕事文脈vol.20)

年齢やライフステージで変化する親と子の関係。だが、サブスクやSNSが行き渡り、カルチャー的なアーカイヴもコミュニケーションもフラット化している近年では、同じアイドルを推したりアニメを観たり、従来の「親子関係」とは違った関わり方も散見される。オタク第一・第二世代と呼ばれるアニメや特撮に親しんだ幼少期を送り、バブル期を体験し、消費によるアイデンティファイを迫られ、サブカルに親しんできた世代を親に持つ、現在20代の方々に、趣味や生活、仕事といった面で、親と子それぞれが与え合っている影響について語っていただいた。(取材・構成:丹野未雪)

#3 「自分の好きなことを一生懸命やるのがいい」反面教師の母と書道と 渡辺一樹さん(26歳)

―― 人文学に関わるイベントを企画主催していらっしゃいますが、題字をお母さん(書家・渡邊縞仙氏)が書いているそうですね。どんな経緯が?

渡辺 イベントの告知をする時、ポスターのデザインによって参加者数が違ってきたりするので、結構大事だと思うんです。書道って保守的なイメージがあると思うんですけど、映画の題字とかで見るとすごいかっこいいじゃないですか。黒澤映画の「用心棒」(題字:鈴木竹影)とか、瀬々敬久監督の「菊とギロチン」(題字:赤松陽構造)とか。僕が書を美的に好きなことと、そもそも母が書をやっていて身近だったことの、どっちが先かわからないんですけど。

画像1

渡辺さんは今年2月から「笹塚人文フォーラム」(Twitter:@sasazukajinbun)の企画に関わっている。母が題字を書いた最新のポスター

―― 自分で書いたりは?

渡辺 学校で書いたものが市の展覧会に選ばれたりはしてたんですけど、そっちにはいかなかったですね。母親のやってる教室に通ったりもしてなくて。

―― お母さんが主宰する書道教室のホームページを拝見したんですけど、教室を始めたのが2005年で、渡辺さんが10歳の頃ですね。

渡辺 母はそれまでいわゆる専業主婦でした。

―― あれ? 「塾長プロフィール」には「大型二種免許/大型特殊免許/けん引免許取得」とありましたが。

渡辺 仕事では使ってないと思います。

―― 趣味ということ?

渡辺 書道を本格的にやる前は、車の運転に対する謎の自負があって、のめりこんでいった結果なんです。僕は子どもの頃、大型二種を持つことがいかにすごいかっていう話を母から延々聞かされたので、逆に普通免許も持ってないという。

―― 交通手段への影響が出ている。ところで、渡辺さんはボクシングが趣味なんですよね? 

渡辺 はい。うちは転勤族だったので、引越しが多かったんですよ。そうするといじめられることがあって。僕が小学3年生くらいの時、西東京市に引っ越したんですけど、結構ひどくいじめられたんです。これはあんまり一般的な教育じゃないと思うんですけど、「とりあえず全員殴り返せ」と母が。

ここから先は

2,016字

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!