見出し画像

バンクーバーと仕事 第2回 人生の手札/太田明日香(仕事文脈vol.9)

 パートを始めて10か月が過ぎた。今は週に5回、30時間近く働いている。時給は11ドルに上がった。けれど、そのあとすぐにバンクーバーの最低賃金自体が10.85ドルに値上がりしたので手放しには喜べない。職場での大きな変化は店長が変わったこと、それから、新しいメンバーが増えたこと。カナダでは6月が年度末で、学校は夏休みに入り、9月に新学年になる。学期中は課題で忙しい学生たちは、授業の間は学業に専念し、夏の間だけアルバイトにやってくる。新学期が始まるとほとんどの学生たちは学校に戻っていった。しかし、一部の学生は残っている。


 英語と中国語が話せて、日本語も勉強中のエジプト人のバカ(Bakr)さんもその一人だ。彼は中国の政治学を勉強中。夏が終わっても働き続けているので、「学校はどうしたの?」と聞くと、「パートタイムの学生だから」という答え。バカさんが通っているのはコミュニティカレッジで、大学と違うのは地域住民に学ぶ場として開かれているところ。といっても市民講座のようなものではなく、英語やアート、ITやビジネスといったプログラムがあり、資格も取れる。さらに、パートタイムで週何回か授業を取って働きながら学べるようになっている。バカさんは4年前にエジプトから移民してきて、働きながらコミュニティカレッジで勉強を続けている。

ここから先は

1,441字 / 1画像

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!