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春日武彦先生、悩まないコツを教えてください! ~ “禊リノベーション”をした自宅訪問&インタビュー(仕事文脈vol.13)

精神科医で作家である春日武彦さんの『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』は、すでに亡くなった母に対し今も残るコンプレックスを克服するため、相続したマンションをブルックリン風にフルリノベーション(!)したという他にはない悩みの解決法を記した一冊です。今回そのご自宅を拝見しながら、なぜリノベーションが禊となったのか、昨今のお悩み事情、そして悩みやすい世の中で人と接するときのコツをうかがってきました。

○うつ退職は遅れてきた通過儀礼

辻本力(以下、辻本) 改めて自宅をリノベーションした理由を伺いたいのですが、本のなかには春日さんが60歳を過ぎてからの悩みについて書かれていて、それはおおもとをたどれば親に原因があるんじゃないかという話でした。そのおうちを相続したことからリノベーションという手段を思いつき、いわば親の象徴である「家」を上書きすることで克服する、ということだったんですよね。

春日武彦(以下、春日) そう、きっかけは相続ですね。ちょうどそのころにリノベーションで家をがらりと変えられることを知って、じゃあやってみようと思い立ったのですが、せっかくやるならなるべく自分の好きなように思いっきりやろうと。逆に言うと、人生において自分の意志で好きなようにやったことって意外と少なかったんです。今ごろかよとは思うけど、半分復讐みたいな気持ちで (笑)。医者になったのだって、もともと家系に多いし一応食いっぱぐれもないし、という理由で、高いこころざしがあったわけじゃない(笑)。

辻本 本を書くことは編集者の意図が入るし、病院でのお仕事も患者さんありきですしね。

春日 ぼくの病院での仕事でいうと、いわゆる「新型うつ病」と呼ばれる症状を訴える人が来ます。そういう人たちはしょっちゅう会社を休むから、せっかく入った一流の会社をクビになるケースも多いんです。それってこっちから見るとものすごくダメージになるような気がするんだけど、本人はがっくり来てないどころか、むしろスッキリしたような表情だったりする。聞いてみると、ある意味で人生すんなり来ているんだけれども、そこで「どこまで俺の意志で来たのかわかんねえな」みたいなところがあるみたい。病気になって会社をやめたことが、ある意味はじめて俺らしさを出せた、っていう感じなんですよ。変な意味で、遅れてきた通過儀礼みたいな。本人的にはやっとここでスタートだぜ、っていう様子でね。そこまでいろんなことが遅れてきているのかなっていうことに驚くけど…自分もこの家だぜっていう(笑)。

編集部(以下、編) そういう人が増えてるっていうことですか。

春日 昔はそんな人みたことない。思春期のうちにジタバタして踏み誤っていくやつもいたわけだけど、今はそれを通らずに社会人になっているんでしょうね。

 ちなみに先生はこのリノベーションで、もう浄化されたんですか。

春日 うーん、とりあえずという形でね。だけど、それを本に書かずにはいられないっていうあたりがなんか業なんだよね(笑)。

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