見出し画像

「渦中にいない人」の言葉を鍛える/森山至貴(仕事文脈vol.18)

 政治とは、言葉を使った営みだ。首根っこを捕まえて力ずくで押さえたり、札束で頬を引っ叩いたりして他人を思い通りに動かすのが政治だと思っている人もいるだろうし、そういう現実も残念ながらあるとは思うけれど、やっぱり言葉を通じた説得と納得が政治の中心にあるべきだろう。だから、この短い文章では、「政治をめぐる言葉」について考えてみたい。

 とはいえ、ここでとりあげたいのは、政治家の問題発言や暴論ではない。女性差別発言を批判されて開催した「謝罪会見」でさらなる暴言を上塗りしたオリンピック組織委員会の元会長、選択的夫婦別姓に関する議論を男性だけでおこない「ニュートラルな」人選と嘯く政権与党幹部など、がさつな言葉づかいで実害を撒き散らす政治家は後をたたない。ではこのような不届き者に対する私の怒りを代弁し、ときには私のかわりに批判してくれるはずのメディアの言葉づかいは、適切なものになっているだろうか?


ここから先は

2,368字

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!