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ないけど、ある仕事/宮川真紀(vol.1)

東日本大震災から9年となりました。犠牲になられた方、被災された方にお見舞い申し上げます。『仕事文脈』は震災翌年に創刊しました。当時を振り返り、1号の発行人コラムをお送りします。あの頃から日本は進歩したでしょうか。

月曜の朝は、資源ごみの日。ビン、缶、段ボール、新聞雑誌などの、リサイクルごみ回収日である。燃 えるごみの日は、カラス対策なのだろう、朝になってから出さないと厳しく指摘されるが、資源ごみに関 しては前日の夜にビンと缶を入れるコンテナを配りにくるから、夜中のうちに出してしまう人も多い。私は犬の散歩ついでに6時頃に出すのだけれど、コンテナはもう、わりと埋まっている。

 ところがそのあと、自治体のマークを付けた回収トラックがやってくる8時、9時になる頃、収集所の モノが減っている。缶やビンや紙類、それぞれに違う業者がやってくるから、時間差で少しずつ回収して いるのかもしれない。が、そうではない事態も起きてるんだろうなと、薄々は思っていた。そして、今日は残念ながら遭遇してしまった。正規ではない、回収車に。

まだ朝の空気がひんやりしている頃、荷台の三方を板で囲んだ軽トラがやってきて、ランニングを着たおじさんが手早く新聞や雑誌の束を車に放り込んでいた。迷うことなく収集所の前で止まり、道の両側から慣れた様子で回収する姿は、ベテランの仕事の動きだった。

その後、今度は缶を集める自転車がやってきた。缶回収のおじさんの自転車を見たことがあるだろうか、 荷台、カゴ、ハンドル左右など大量の缶入り袋を芸術的に積み上げている様を。荷台は何かで補強したり 長さを出したりしているのか、収容量をあげるための細工が施されている。そんな特別仕様車で現れたお じさんは、コンテナ内の缶を、すでに十分に埋まっている袋に詰め込み、若干ふらつきながら自転車をこいで、去っていった。

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