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私は悩まない/辻本力(仕事文脈vol.13)

 正直、悩んでいる暇はないのである。

 近年、SNSによって可視化された膨大な「悩み」にアテられて気が塞ぐ、なんて人も少なくないという。気持ちはわかる。ツイッターのタイムラインには、加えて気の滅入るようなニュースや醜悪な罵詈雑言が溢れている。そんなものを毎日摂取していたら、そりゃアルコール度数高めのチューハイでいろいろ麻痺させなければやっていけないーーそんな気分にもなろう。
 しかも、これらは外からやってくる「悩み」だ。それとは別に、個人的な悩みにも目を向けねばならない(というか、そっちを解決するのが先決だ)。悩みに対して、私たちはどれだけの時間を浪費しなければならないのか。
 正直、悩んでいる間に、やりたいことの一つもやった方がいいし、そもそもやるべきことだって山積している。悩んでいる暇なんてないのである。しかし隙あらば、ヤツらは心の隙間に忍び込んでくる。

 とはいえ私自身は、実はそれほど悩んでいるという自覚はない。
 いや、正確にいえば、悩みはめちゃめちゃある。フリーのライター・編集者という超不安定な職業であり、しかも「仕事が減り始める」と言われている40歳も目前だ。フリーであるということは、すなわち「働けなくなる=即無収入」ということだが、にもかかわらず、特別身体が丈夫なわけでもない。せめて足腰くらいは……というわけでジム通いなどはしているが、そっちが丈夫でも内臓関係をやってしまったら何の意味もない。でも、足つぼを押すと、嫌が応もなく内臓全般の弱さが露呈し「ああ、ダメだなこれは」となる。以前、健康診断で引っかかったγ-GTPの数値も脳裏をよぎる。
 それでも、ことさら悩みはしない。というのも、自分のこれらの問題は、悩んで解決する類のものではないからである。むしろ、可能な限り冷静に、対策を考える方が解決に向かうはずだ。40歳で仕事が減るなら、減らないようにいい仕事をして、信用を上げる。健康の悩みがあるなら、食生活を見直したり、睡眠の質を上げる。その方が、ウダウダと悩んでいるよりよっぽどいい(もちろん、自分ではどうしようもない、外的な要因からくる悩みはその限りではないが)。

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