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腹弱/辻本力(仕事文脈vol.9)

 恥ずかしい話だが、お腹が弱い。
 フリーのライター/編集者になって受けた最大の恩恵は、仕事場が自宅になったことだろう。満員電車で出勤していた時は本当にキツかった。物理的に腹部を圧迫される辛さもさることながら、来たるべき極限状態を想像すると、それだけで今すぐ途中下車したくなる。できることといえば、最寄駅から職場のある駅までのトイレ事情ーー個室の数や、平均的な混雑具合等ーーをきちんと把握しておくことくらいである。備えあれば憂いなし。幸いにも大惨事には至ることはなかった(危ない局面は何度もあったが)。

   しかし、いくら出勤がなくなったとはいえ、問題がすべて解消されたわけではない。取材や打合せで外出することも少なくないからだ。その場合は、出先で食事を済ませることになる。午前中で仕事が片付いてしまうような時はいい。開放感に浸りながら、心置きなく、好きなものをたらふく食べられる。問題は、仕事前に食事を済まさなければならない場合だ。

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