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40歳、韓国でオンマになりました 第1回:世界で最も親になるのが悩ましい国/木下美絵(仕事文脈vol.17)

 新型コロナの流行とほぼ同時期に分かった妊娠。外出も人と会うことも最小限にならざるを得ない日々でも時間はどんどん過ぎるもので、出産まで残すところ一カ月。いよいよ臨月に入った。ちょうどこの原稿が『仕事文脈 vol.17』に掲載される頃、私は韓国で一人の女の子のオンマ(ママ)になっている。

 韓国人の母と日本人の父を持つ私自身のように、海を隔て隣り合う二つの国にルーツを持つ子。異なる言語や文化をめぐりかつて自分が経験した出来事に、いずれこの子も直面するんだろうか。将来はどこで何を学び、どんな仕事に就くんだろう。可能性に満ちた子どもの未来をふわふわと想像する一方で、韓国人の夫はこのところ毎晩、投資の勉強に余念がない。これから出費が増える家計のため、いつか訪れる娘の独立を支えるため、夫婦の老後に備えるため。これまで何度となく胎動に触れさせても「うーん、俺は顔を見るまで実感ないわ」と言い続けていた夫だったが、ようやくここに来て「緊張してきた」らしい。本業を終えて帰宅後も明け方まで机に向かう姿に、もう少しでアボジ(父)になる彼なりの本気度を感じている。

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夫の勉強姿を見るのは学生時代以来

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