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会わずに仕事 クラウドソーシング体験記/003 そもそも「会わない」翻訳業 クラウドソーシングのシステムが手間 (仕事文脈vol.20)

コロナ禍になりリモートワークやオンラインミーティングが普及し、仕事で誰かと直に対面する機会が減った。実際、メールやZoomなどオンラインのみで業務が完結した、という人も少なくないのではないだろうか。コロナ前、あれほど「会う」ことが重視されていたようなのに、なんだか拍子抜けだ。
では「会わない」ことを大前提とした仕事「クラウドソーシング」はどうだろうか。企業がインターネット上で不特定多数の人に業務を発注するというプラットフォームだ。単発的な案件から長期的な契約によるもの、募集に応募するものもあれば、企業が事業者を探し直接依頼するものもあるなど様々で、クラウドソーシングを主な仕事の場とする人もいれば、副業として利用する人もいる。今回は異なる業種の3名に「クラウドソーシング体験」について寄稿してもらった。ちなみに本企画もまた、企画書のみを渡し、原稿のやりとりなど全てメールで行った。それゆえか文体や構成など三者三様となった、ということを付け加えておく。(浪花朱音、編集部)

003 そもそも「会わない」翻訳業 クラウドソーシングのシステムが手間

M・Hさん(翻訳者・沖縄県・34歳)

 私は、日英・英日の翻訳者として仕事をしている。割合としては日英翻訳のほうが多く、自分が専門としている分野以外にも、できそうだと思った仕事は受けるようにしている。仕事のほとんどは登録している翻訳会社から受注しており、おそらく翻訳者として最もよくある仕事スタイルをとっている。人から紹介された仕事や、自分が以前に勤めていた会社からの仕事も受けているが、翻訳会社からの仕事が最も効率が良く、やりやすい。

 クラウドソーシングでの仕事は、まったくしていない。開業時に複数のクラウドソーシングサービスに登録したが活用できなかった。クラウドソーシングでは、自分のプロフィールを作成してスキルを出品し依頼が来るのを待つこともできるし、依頼主が募集をかけている案件に応募することもできる。このスタイルが私には合わなかった。

 日英・英日翻訳に対する募集は常に多数あり、どの案件にも複数の翻訳者が応募している状況で、コンペのようになっている。受注するためには、自分の専門分野の案件を探し、詳細を確認して見積もりを出し、そのうえで自分の専門性やサービスの良さをアピールしなければならず、大変な手間だと感じた。

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