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【連載】「聞く」という仕事 辻本力「『関心が薄い仕事』の打開法(私の場合)」(仕事文脈vol.22)

 最近、とある原稿でこれまでの仕事を振り返る機会があった。

 地方の文化施設で演劇の制作をしていた私が、上京(初)し、『生活考察』というひとり雑誌を立ち上げ、同時にフリーのライターとなったのは二〇一〇年のこと。気づけば、もう一〇年以上この仕事をしていることになる。感慨深い。ほぼ未経験に近い状態で出版/メディアの世界に飛び込んだこともあり、当初は仕事もあまりなく、しかも数年後には東日本大震災というタイミングだったこともあり、なかなか大変だった。派遣の仕事で糊口をしのいだ時期もある。よく廃業せずに続けてこれたものだ。最近では「こういうの興味ありそうだと思って」と、なんとなく私の関心や得意分野を考慮に入れた依頼をいただくことも増えた。本当にありがたいことである。

 とはいえ私は、これといった専門分野を持たないライターだということもあり、いろいろな仕事をしてきたし、そうした「なんでも屋」的なスタンスは今に至るまで変わらない。具体的に言えば、取材対象がひたすら多岐に渡る。小説家、美術作家、精神科医、経済学者、役者、芸人、歌人、俳人、詩人、漫画家、経営者、マッサージ師、編集者、ミュージシャン、研究者、ファイナンシャルプランナー、労働組合、飲食店、アパレル店、レコード店、水族館、産業医、ラッパー、官僚、ブロガー、哲学者、TVプロデューサー、映画監督、アナキスト、国語辞書編纂者、アニメーター……と思いつくままに挙げてみたが、まあ一貫性のかけらもない。我ながらよくやってきたな、というか、そもそもよく引き受けたな、と思うし、それを言うならば、よく依頼してくれる人がいたな、とも思う。

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