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【座談会】堂々巡りの対話ー「社会課題にのりきれない」背景にあるもの・前編(仕事文脈vol.23)

社会課題を「自分ごと」にするにはどうしたらいいんだろう? そんな疑問からさまざまなアクティビストにインタビューするZINEを作れないかと考えた、タバブックスでアルバイトとして働く椋本。これに対して、「まずはどうして自分ごとにならないかを考えてみたら?」と、『仕事文脈』発行人の宮川が提案し、タバブックスのスタッフブログで「社会課題にのりきれない」という記事が公開されました。
このやりとりを重ねる中で、「社会課題にのりきれない」のは常識や慣習に囚われているからでは? という議題が浮上し、編集部の小沼も交えて特集の一環として話をしてみることに。社会課題に今ひとつのりきれない、という声はよく聞くが、その背景には何があるか、何を見落としているのか、などを話しました。

「社会課題にのりきれない」のはなぜか

椋本 ジェンダー問題、気候変動、人権など、たくさん社会問題があるじゃないですか。僕のまわりにはそうした問題に声を上げたり、具体的な活動をしたりしている人が多いんですけど、自分はそれを重要だと認識しているのに自分ごととして動くことはできていないんですね。
 それで、このことを新しい企画にしてみるのはどうかと思って『自分ごと』というZINEの企画書を書きました。もともと自分ごとだと考えていなかった社会課題に対して行動している人は、何がきっかけでそれを知り、どんなモチベーションで行動しているのか。インタビューすることで、自分にとっての気づきを得られたらいいんじゃないか、というものでした。

宮川 企画書をもらって、まずはなぜ自分ごとにならないのか聞きたくて、ブログ原稿を書いてもらいました。上がってきた原稿を読んで、何度かやりとりをしたあと、最終的に私のコメントつきで「社会課題にのりきれない」というブログ記事をアップしました(*1)。

小沼 ブログには僕の名前も出てきたので、公開前に読ませてもらいました。

宮川 公開までに三回くらい書き直してもらったんだけど、最初はもっとジェンダーのことを書いていたんだよね。タイトルも、「タバブックスで働いているのにジェンダー問題にのりきれない。」。少し前に、ジェンダーギャップ指数が過去最低を更新したっていうニュースを受けて、うちのフェミニズム・ジェンダー系の本の書店さん向け販促チラシを作ってもらったんだよね、そこにそれぞれの本の特徴も簡単にまとめて入れてもらったんだけど、「そうじゃないんだよな」みたいなことがやっぱりあって。
 例えば販促文の冒頭、「ジェンダーギャップ指数が過去最低となりました」みたいな文言のあとに、「女性が気持ちよく働けるために、みんなで考えましょう」といった言葉がありました。いや、気持ちよくとか感情の話じゃないし、考えなくてもそういう事実がある。その背景に何があるかという本を出しているので、このコメントはうちからは出せないと。
 なので、きっとピンとは来ていないんだろうなと感じていたところにZINEの企画書をもらったから、自分ごととして考えられないその原因をはっきりさせた方がいいんじゃないかと考えました。今回のテーマも「伝統常識一旦解体」だし、椋本さんが「乗り切れない」のは、常識や慣習に囚われているところがあるのでは? という話になったんですよね。

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