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親/子の影響#2 (仕事文脈vol.20)

年齢やライフステージで変化する親と子の関係。だが、サブスクやSNSが行き渡り、カルチャー的なアーカイヴもコミュニケーションもフラット化している近年では、同じアイドルを推したりアニメを観たり、従来の「親子関係」とは違った関わり方も散見される。オタク第一・第二世代と呼ばれるアニメや特撮に親しんだ幼少期を送り、バブル期を体験し、消費によるアイデンティファイを迫られ、サブカルに親しんできた世代を親に持つ、現在20代の方々に、趣味や生活、仕事といった面で、親と子それぞれが与え合っている影響について語っていただいた。(取材・構成:丹野未雪)


#2 神棚の下の『ONE PIECE』、家族団欒と『進撃の巨人』子の趣味でアップデートする親 荻野明伊さん(23歳) 源島菜月さん(23歳)

―― お二人は同じ大学に通う友人なんですよね。

源島・荻野 そうです。

―― お母さんが娘の影響を受けて、BLへの拒否感がなくなったという源島さんからお話をうかがってもいいですか?

源島 わかりました。うちで一番最初にBL漫画を読み始めたのは妹で、私も最初は「何だろう?」みたいな感じだったのが、だんだん一緒に読むようになって。「親に絶対見せられないから隠しとく」っていうのが腐女子あるあるだと思うんですけど、わりと大っぴらというか、テーブルの上に置いたままだったり、あんまり隠したことがなかったですね。

―― 日常風景に溶け込んでいたという。

源島 それでライトなBLを母に勧めたり。もともと母は活字派だったんです。買っていては身がもたないぐらいたくさんの本を読むので、市立図書館によく行っていたんです。その影響で私も妹も「青い鳥文庫」シリーズとか借りて読んでいて。母から「これ面白かったよ」と言われたら、「読んでみるか〜」って私たちも読む感じで。宮下奈都『神さまたちの遊ぶ庭』は、「ああ、面白い!」って言いながら家族で回し読みした記憶があります。今、本屋さんや出版社でアルバイトしているのは、そういうのがあったからかもしれないです。本を読む習慣とか身近に本がある環境って、趣味を形作るよりももっと影響が大きいというか、基礎なのかな。自分が好きだと思うものは、わりと自分で開拓していったという感覚があるので。

―― なるほど。

源島 BLだけじゃなく、親が漫画を読むようになったのは私たち子どもの影響かなと思います。BLも、最初は「気持ち悪い」って言ってたけど、今はむしろ「かわいい」とか言っていて。よしながふみ『きのう何食べた?』に対しては、「いいよね」って。

―― 漫画は源島姉妹が開拓していったんですね。

源島 小学生の時に読んだ『ONE PIECE』が最初かもしれないです。アニメから入ったんですが、初めて漫画にハマって、次第に家族で手分けしてコミックを買い集めるようになっていって。神棚の下に『ONE PIECE』を収納するケースがあるんですけど、そこからおのおの取り出して読んでました。その後、私や妹の本棚には『FAIRY TAIL』『BLEACH』とかが並ぶようになって、それを家族みんなで読むようになって。

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読書好きの母、少年漫画とK-POP好きの姉妹、それぞれが影響を与え合う源島家。象徴的な3つは、宮下奈都氏のエッセイ、BTS、『ONEPIECE』(源島さん)

―― 少年漫画誌連載のコミックは巻数が多いですよね。『ONEPIECE』なんて100巻超えてますし。誰がどれを買うか、ジャンルによって分担したり?

源島 シリーズごとというか。『マギ』は妹が担当してました。

荻野 うちの場合、父は漫画に理解があったというか、宮崎駿やSF系が好きで。私の中学では漫画を持ってきちゃいけなかったんですけど、友だちにどうしても『進撃の巨人』を貸したくて持って行ったらバレてしまって、ついに三者面談することになったんです。父は先生にあやまったんですけど、私の前では「ふん、漫画のどこがいけないんだ」っていう感じで。

―― 一緒に楽しんでいた作品はありますか?

荻野 私よりも父が『プリキュア』シリーズにハマってて、日曜の朝は父に叩き起こされてました(笑)。子どもの頃の私は気がつかなかったんですけど、伏線があったり、ラスボスと思っていたものが本当のラスボスではなかったというストーリー展開とか、すごく面白かったみたい。逆に母はアラブ出身というのもあるのか、あまり漫画やアニメに馴染みがなくて。私と妹が『進撃の巨人』がいかに面白いか力説しても、最初は「巨人? 意味がわからない。意味がない」と興味がなかったんです。それが、コロナ禍でずっと一緒に過ごしてたっていうのもあると思うんですけど、「面白いからとにかく観てくれ」と言ってアニメの第一回から一緒に観直したらハマってくれて。

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