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言葉と身体の健康的な関係 作家/鍼灸師 松波太郎さんインタビュー(仕事文脈vol.17)

近年、SNSをはじめ、ネット上の言葉に傷つく人が増えている。それは、自身に向けられる誹謗中傷のみならず、他人同士の言葉でのやり合いや、特定の人物や企業などに対する不特定多数からの攻撃——いわゆる「炎上」と呼ばれる状態など、自分「以外」が受けるダメージまでもを内面化してしまう人の増加も含む。そして客観的に見る限り、こうしたネガティブな状態はどんどんエスカレートしているように見える。そんな、ある種の現代病とも言える「言葉と病み」の問題について、作家と鍼灸師の2つの顔を持つ「言葉と健康のエキスパート」松波太郎さんに話を聞いた。取材・文:辻本力、編集部

■言葉と身体は相性が悪い

辻本 まず最初に、松波さんの個人的な感覚として、「言葉と身体(健康)」の関係というのは、どのように考えていらっしゃいますか。

松波 基本的には、言葉と身体は相性が悪いと思っています。SNSは自分がやっている鍼灸院に関してのみで、普段ほとんど触れることはないのですが、始めてみて分かったことがあります。それはツイッターの140字制限に顕著ですが、とにかく「短い言葉」で完結してしまう場だな、ということです。言葉がどんどん短くなってフレーズ化されるとともに、そのパンチ力もアップする。それで「上手いこと言った」みたいなことが良しとされる世界になってくると、言葉がどんどん尖り、暴力的になっていくんですよね。受け手のほうに視点を転じると、極論かもしれませんけど、メンタル面、身体面が健康な人はある程度言葉に対しても堪え性があるというか、受け流すことができます。自分の体内循環で、受け身が取れるようになっているというか。逆に身体や心の状態が悪いと常にピリピリして、そうした短いフレーズ化した言葉を受け流すことも苦手になるし、場合によっては、防御のために今度は自分が攻撃をする側になっていくことも。それで堂々めぐりになっている側面はあると思います。鍼灸院での治療の話になりますが、私が使っている鍼(はり)って尖ったものなので、本当に身体が弱っている人は、ちょっと当てただけでもすごい痛がるんですよ。逆に、身体が整っていると尖っているものも受け入れられる。それと似ていますね。

編集部 「言葉と体は相性が悪い」というのは、具体的にはどういうことでしょうか。

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