見出し画像

バンクーバーと仕事 3 ほどほどに働こう/太田明日香(仕事文脈vol.10)

一生懸命働くな?


 カナダの職場でよく聞いた「Don’t work too hard」という言葉がある。直訳したら「あんまり働きすぎるなよ」となるだろう。一生懸命働くのが美徳だと思っていたティピカルジャパニーズのわたしからすると、最初聞いたときにぎょっとした。
 どんなシチュエーションで言われるかというと、クリスマス前に買い物に来たお客さんと雑談していてとか、同僚に「今週何日働いてるの」と聞かれて「週5」と答えたときとか、土曜日に買い物に来た知り合いが帰り際にぼそっととか。 
 クリスマスは日本でいう正月みたいなものだし、土曜日は休日だから、「そんな時期に働いてるの」とか「せっかくの休みなのに残念だね」みたいなニュアンスが籠っている。仕事もいいけどそこそこにね、とねぎらってくれているのだろう。
 「仕事は一生懸命やるもの」「人より倍働いて一人前」という考え方が、自分にいかに染み付いていたか。初めてアルバイトしたファーストフード店でも、フリーになりたての頃にかけもちしていたカフェバイトでも、同僚や店長はみんな空き時間があれば自分でなにか仕事を見つけて、時給以上に店に貢献することが当たり前という考え方だった。

ここから先は

3,043字 / 5画像

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!