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ギグ・エコノミーと働く時間の「自由」の問題 西口想

自由に働きたいですか? それとも、不自由な働き方をしたいですか?

そんな2択を迫られたら、多くの人は「もちろん自由に働きたいよ!」と思うはずです。私もできれば自由に働きたい。

では、なにが私たちの働き方の自由度を左右するのでしょうか。働く場所、人間関係、業務内容……多くの要素が関係しそうですが、なかでも時間は最も大切なものだと思います。ただ、労働時間における「自由」とは何かを考えはじめると、一筋縄ではいかない問題であることに気づきます。

不自由な、縛られた時間で働いている存在として、まず「会社員」を思い浮かべる人は多いでしょう。首都圏に通勤している人であれば、毎朝7時前には起きて満員電車に揺られ、定時でも17~18時頃までは帰れず、残業をこなせば家に着くのは21時や22時を超える日もある。そして睡眠不足のまま翌朝出勤。それが週5日以上続くので休日は昼まで寝てしまう。そんな働き方は珍しくありません。それでも給料はいつも生活にギリギリで、貯金もままならない。自己啓発本に「会社員はオワコンだ」と煽られるまでもなく、私も含め、会社勤めを続けているとどうしても倦んでくるというのが勤め人の正直な実感ではないでしょうか。 

それなら、自分の好きなときに好きなだけ働けることが「自由な働き方」ということになりそうです。近年、「ギグ・エコノミー」と呼ばれる就労の形がそうした「自由」を打ち出して世界中で広がってきました。「ギグ」とは、ミュージシャンたちの短いセッションや一晩限りの小さなライブを意味する英語のスラングです。つまり、ギグみたいにかっこよく、見知らぬ者同士がパパッと集まって仕事をし、すぐ解散するような働き方であると。日本でよく知られるのは、インターネット上のプラットフォームを通じて飲食店の出前を個人で請け負うウーバー・イーツの配達員や、アマゾンなどの荷物を宅配するデリバリー・プロバイダです。彼らはギグ・ワーカーと呼ばれていますが、こうしたサービス自体はすでに生活に身近なものになっています。

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