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「聞く」という仕事 辻本力 第五回 話が盛り上がらない(かもしれない)質問(仕事文脈vol.18)

 インタビューの場に限らないかもしれないが、「話が弾むに違いない」と思って振った話題が不発に終わることがある。会話のキャッチボールが二往復するかしないかで、沈黙が訪れる。慌てて話題を変えるも、流れる微妙な空気が気まずくてツライ……。

 原因はなんだろうか。相手が気難しい人で、さらにその時たまたま機嫌が悪いタイミングだったとしたら、誰がやっても、どんな質問をぶつけていたとしても同じ結果になったはずだ。これはどうしようもない。ただ、インタビューにおいて話が盛り上がらないのは、往々にして聞き手の側に問題がある、と考えるしかないと思っている。「聞く」ことが仕事である以上、そこは責任を持って手を尽くすなり、なんとか取れ高を稼ぐべく食い下がるなりするしかないのである。

 話が盛り上がらない、まで行かなくとも、比較的淡々と進行することは珍しくないし、これは全然問題ない。まれにドッカンドッカン盛り上がるケースもなくはないが、それはこちらの投げる球がドンピシャだったから、というよりは、相手の話術の巧みさとサービス精神の旺盛さによるものだろう。間違いなく、聞き上手ならぬ「聞かれ上手」な人というのはいるものだ。以前、『聞く力 心をひらく35のヒント』という著書もある阿川佐和子氏にインタビューする機会があり、「『聞く』プロに話を聞くって、どうすりゃいいんだ?!」と超緊張して臨んだのだが、何でも愛想よく答えてくださるわ、話も面白いわで舌を巻いたものだった。

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