『フェミサイドは、ある』の仲間たちと座談会①(後編)
ZINE『フェミサイドは、ある』にも登場する、一緒に活動してくれた仲間たちと1年後の座談会を開きました。その様子をお届けします!
参加者:芹ヶ野瑠奈さん(「日本若者協議会」ジェンダー委員)、山崎彩音さん(上智大学エンパワーメントサークル「Speak Up Sophia」共同代表)、皆本夏樹(「フェミサイドのない日本を実現する会」発起人)
座談会①前編はこちら!
同い年くらいで、カマラ・ハリスのSNS担当者がいて。
山崎:夏樹さんのZINEを読んだ時に、あの小田急線事件のニュースを見てモヤモヤした高校生の子とかもいたんだろうなって思って。自分は大学生で、デモに参加したり記者会見に参加したりしたことによって少しずつ消化できていったけれども、それができなかった人たちがきっといただろうから、そういう子たちに読んでほしいなって。高校生だったら、自分の3つ上とかのお姉さんが、どんなことを考えてどんなふうに頑張ってるのかを見られる機会があるといいなと思って。「自分が数年後こうなってるかもしれないな」っていう感じの人が文章に残すことって、すごいエンパワーされるんだろうなって思いました。
皆本:芹ヶ野さんってわりと最近まで高校生でしたよね。高校生の時って「こういう人みたいになりたいな」ってありました?
芹ヶ野:ロールモデルですか。私、環境問題の「Fridays For Future」とかの活動をしてて、周りに大学生が多かったんですよ。それにいろんなことやってる高校の先輩もいました。あと同じくらいの年、今21歳かな、大学生で、デジャ・フォックスっていう女の人がいて。アメリカでカマラ・ハリス副大統領の選挙のSNSキャンペーン担当者だったらしくて。
皆本:えー!すごい。
芹ヶ野:「なんじゃそりゃ!同い年くらいでカマラ・ハリスのSNSキャンペーン?」みたいな。「私は何やってんだ!」とか思って。それで私も「選挙の手伝いをしたい」と思って、都議会や衆議院選挙のお手伝いをするようになったって感じです。
選挙のお手伝い、結構楽しかったです。
皆本:そうなんだ。私も選挙のお手伝いしたいなと思って。参院選の時は何もしなかったんですけど。
芹ヶ野:ポスター配ったりとか地味な作業も多いけど、若い人がいるだけで、他の同じ世代くらいの人がちょっと目を合わせてきたりするから。「あれ?」みたいな。SNSとかを手伝ってくれる人、いつも募集してると思います。インスタグラムのリールとか作れるとすごく需要があると思います。
山崎:私は今回の参議院選のお手伝い、気軽な気持ちでやりました。社民党の政党要件がなくなっちゃうかもってことで、「それはやばい」と思って福島みずほ事務所に。「ボランティアしたいんですけど」って電話して見学に行ったら、同じボランティアのおばあちゃんたちに「ケーキ食べな」とか「お茶飲みな」って言ってもらって。チラシ沢山折りました。ちょくちょく友達を誘って行ったりとか、「パリテ・アカデミー」の仲間と一緒に行ったりとか。私があまりにも行くもんだから、パートナーも一緒に証紙貼りのボランティアしたりとか。
皆本:めっちゃ良い(笑)
山崎:お茶の水の駅で、街頭演説があったんですよ。その日の夜、「デートしよう。お茶の水の駅で集合で」って言ってたら、先にパートナーが街頭演説を聞いてて。「次、〇〇さんのスピーチだよ」っていうLINEが来て。「聞いてんのかい」って(笑)あと新宿の西口で、街頭演説の応援スピーチをさせてもらったんですけど、やっぱり若い人がいると目立つから、それだけでチラシ貰ってくれたりとか。私としてはもちろんあくまでボランティアだから、その政党の考えとかに全部賛成していなくても、とりあえずその候補が受かってほしい、福島みずほの名前を覚えてもらって比例で書いてもらう、っていうのがミッションだったので。そういう感じでやると結構楽しかったです。
性被害の聞き取りの意識を変えるのは、「あなたは悪くないよ」っていうためにすごい大事
皆本:そういえばこのメンバーで座談会だけど、全然フェミサイドの話してない(笑)
芹ヶ野:肝心なところ(笑)フェミサイドに関して、次なにするとかって決まってますか?
皆本:特に決まってなくて。でもやっぱり自分で思ったのは、去年の署名は内閣府と法務省宛てだったけど、警察には出していなくて。フェミサイドとかジェンダー暴力に関して「ちゃんとしろよ警察」っていうことをもっとやらなきゃと思っています。
山崎:この間、岐阜県警が性犯罪の被害者の聞き取りで「あなたは悪くないよ」と、セカンドレイプとかをなくすために「性犯罪捜査室」を新設したっていう記事があって。
本人の言葉で自発的に言いたいことを聞くようにするとか、適切な聞き取りをすることによって刑事的解決につなげていくみたいなのをやっていました。こういうメッセージを発してくれるだけでもいいんだなと思って。これを警視庁とか、もっと大きな立場の人がやってくれたらいいのにって思います。
芹ヶ野:すごい重要ですね。聞き取りを行なう時に、ちょっと懐疑的な風に聞いてくる人とかもいるじゃないですか。「本当にそうだったの?」とか「なんでわかるの?」とか。あとは駅員さんに痴漢の被害を話した友達が、「いつもと違う路線だったら被害届出さなくてもいいんじゃない?」とか言われてるんですよ。
皆本・山崎:?!
芹ヶ野:そもそも被害届を出さないといけないことを教えてくれないとか。駅員さんに話しに行って満足して帰ったら、「あれ?連絡ないな」みたいな。被害届を出さないと、痴漢の件数にカウントされないんですよ。っていうことは、他にもきっと被害届を出さないといけないって教えられてない人もいるんじゃないかなと思う。あと「もし被害届を出すと相手が困っちゃうから、やめといたら?」とか「ちょっと今忙しいから」とか普通に言われる人いるらしくて。本当に。
皆本:ふざけんなよ。
山崎:駅のポスターに書けばいいんですかね。「痴漢は犯罪です」「痴漢されたら必ず被害届をここから出して」みたいな。
芹ヶ野:そうそう。被害者はプロセスがわからないじゃないですか。「明日もし痴漢に遭ったらこれをして、これをすれば大丈夫」って知らないから、「どうすればいいの?」みたいな。
皆本:本当に。
山崎:そうそう。
芹ヶ野:普通に警察の取り調べの中でも、ちゃんと「こういうことを全部します」って教えてくれるんじゃなくて、「はい、次ここに行ってこれをしてください」とか。自分の守られるべき権利とかも知らないと、全体像が掴めなくて自分の権利がおろそかになっちゃう。例えば、本当は男性の警官か女性の警官か選べるんだけど、もしそれを教えてもらってなかったら指名できないじゃないですか。私の友達も、女性の警官がよかったんだろうと思うんですけど、女性の警官が選べるってことを教えてもらってない。だから警官の取り調べの口調を変えるとか、意識を変えるっていうのは、被害者に「あなたは悪くないよ」っていうメッセージが届くためにすごい大事だと思います。
ヘッドホンをしてたことと被害に遭ったことは関係ないじゃないですか。
皆本:つい昨日、これは警察じゃなくてメディアなんですけど、NHKの記事で「強制わいせつ傷害容疑者逮捕 ヘッドホンで気づかず女性被害か」っていうタイトルの記事があって。被害者の女性はヘッドホンをつけていたため気づかなかった、みたいな記事。なんで被害者がヘッドホンをしてたっていう情報が必要だったの?っていう。それって、ヘッドホンをしてた被害者が悪いっていうことじゃないですか。
芹ヶ野:被害者の落ち度についてめっちゃ注目するみたいな。
皆本:歩きスマホの危険性に詳しい専門家に聞いて、ヘッドホンで注意が散漫になってただろう、みたいなことも書かれていて。被害者に落ち度があったっていうことを証明するかのように書いてるじゃないですか。最悪だなと思って。
芹ヶ野:普通、強制わいせつ罪の専門家とかに聞きますよね。
皆本:そうじゃないですか。性犯罪の対策をしてる専門家に聞けばいいのに。
芹ヶ野:「音楽を聞きながら自転車に乗った場合、通常に比べて飛び出してくる人に気づくまでの時間が0.2秒ほど遅くなったということです」って、どうでもよくないですか?この貴重な文字数を使って、もっと伝えたいことあるでしょっていう。
山崎:わけがわからない。悪意しかない。
皆本:昨日、NHKにお問合せメールしました。
芹ヶ野:ニュースの見出しとかも結構そういうのあるんですよね。アメリカではそういうニュースのタイトルに敏感なフェミニストが多いです。「男性が女性に加害をした/性犯罪を行なった」っていう見出しじゃなくて、いつも「女性が被害に遭った」っていう見出しなのがおかしくない?っていう。
山崎:芸能人とかの「女性問題が」とかもすごいモヤモヤする。「女性問題」って何?みたいな。
皆本:女性に問題があるんじゃなくて、相手に問題があるじゃんっていう。
芹ヶ野:あと時々、女性の芸能人が性加害とかを受けて「この度はそういう事件に巻き込まれてご迷惑をおかけしました」って謝罪するとか。
山崎:ありますよね。最悪だなと思います。
皆本:そういうのとどうやって闘ったらいいですかね。とりあえず私はこのNHKの報道は本当にひどいと思って。
山崎:これは「Speak Up Sophia」のSNSで言います。
皆本:お願いします。
山崎:だってこれ、2週間の怪我も負わせてるんですよね?なのにこの加害者の人、名前くらいしか書かれてなくて、「一時の気の迷いでやってしまった」みたいな。そこを詳しく追求すべきなのに。
皆本:本当に「気の迷い」なのか?って思いますけど。オートロックのマンションにわざわざ入ってやってるし。っていうか、そもそもオートロックなんですよね。オートロックの物件って、そうじゃないところに比べてたぶん家賃高いじゃないですか。そのお金を払ってオートロックに住むっていう安全対策を被害者はすでに行なっていて、それでも襲われたんだから、彼女の行動と被害は関係ないっていうことがわかるじゃないですか。安全対策をしていたとしても、加害する人はするっていう。ヘッドホンも関係ないじゃないですか。
芹ヶ野:ヘッドホンとかみんなしてますよ!
皆本:なんで安全のために女性はヘッドホンをしちゃいけないんだって思って。
芹ヶ野:誰が書いて、誰がゴーサインを出したんですかね、この記事。
山崎:その人たちと話したいですよね。
皆本:そう。お問合せフォームに「返信してください」って書いたんですけど、返信が来るかどうかもわからないから、フェミサイドのときに取材してくれたNHK記者の人に、個人的にメールを送りました。
山崎:このニュース、ちゃんと追求したいですね。
(※このあと、Speak Up Sophiaのツイッターで記事の問題点を発信してくれました。)
皆本:じゃあ、そろそろ時間ですね。
芹ヶ野:また今度座談会しましょうよ。
皆本:今回はなかなか皆さんの予定が合わなかったので、2つの小規模のグループに分けてって感じだったんですけど、またリアルで会ってもいいですし。また一緒にやれたら嬉しいです。
次回は別のメンバーでの座談会の様子をお届けします!
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