見出し画像

座談会「東京生まれ・東京育ち」のモヤモヤ・後半(仕事文脈vol.16)

座談会「東京生まれ・東京育ち」のモヤモヤ」前半からの続きです。

ストーリーなき東京出身者たち

——皆さんは、東京外に移住したいと思ったりします?

一同 したい!

竹花 めちゃめちゃしたいです、気持ち的には。でも東京出身者には、そもそも「地方に移住する」というストーリーがありません。地方出身なら、大学進学を機に上京するという移動の選択もあると思うんですけど。きっかけもないし、便利だから結果的にずっと東京にいる、みたいな感じの人が多いのでは。

前 私も、叶うなら、もっと人が少ないところに行きたい。ただ現実問題として、現金収入を得ないとすると、仕事をどうする? ということになってしまう。行けばなんとかなるのかもしれないですけど、交友関係も、人脈も何もないところにいきなり行く勇気はなくて……。

竹花 私も、母が老いてきているし……身軽じゃなくなってしまったんですよね。ここに住まなきゃいけない、という、いわば東京に閉じ込められている感覚もあります。 

前 私は「閉じ込められてる」というほどの閉塞感はありませんが、元気だとはいってもやっぱり両親も高齢になってきていますし、外に出るにしても、そんなに遠くには行かない方が良いのかなと思っています。

画像1

【私の東京・4】四ツ谷は個人的にわりと縁のある土地だったり、中央線が皇居のお堀沿いに走っている風景も独特で好きな風景です。何年か前の、桜の時期に(前)

宮川 さっき、「『地方に移住する』というストーリーがない」という話がありましたけど、東京出身者には、共有できるものがけっこう少ない気がする。例えば、山内マリコさんの『ここは退屈迎えに来て』という、地方暮らしの憂鬱をテーマにした連作小説がありましたけど、あれに共感してる人がすごく多いですよね。地方出身は「よくぞ言ってくれた!」みたいに思うみたい。でも、それは私たちにはない感覚で。

竹花 私の地方出身の友人たちも「あの作品は、私の気持ちを代弁してくれている!」と言っていました。でも、東京出身の私はあの感覚が本当の意味では理解できないし、かといって、それに代わるストーリーもない。私が自分自身を投影できるストーリーってなんだろう? と考えるけど、未だに見つからないまま。実際、こうやって集まって話してみても、東京出身者も人それぞれ過ぎて、一つの大きなストーリーにならないんですよね。それが都会らしいとも言えるかもしれません。

画像7

【私の東京・5】調布市の野川、年に1日だけ地元の企業が川岸の桜をライトアップする。情報が探しにくく、飲食などはないけど毎年すごい人(宮川)

ここから先は

2,369字 / 4画像

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!