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Upić się warto (酔っ払うことに価値がある) 第3回 ポーランドと、移民と、そこで産まれた子どもと/浪花朱音(仕事文脈vol.14)

 

ポーランドと、移民と、そこで産まれた子どもと

 海外で生活をしていると聞くと、どんなイメージを持たれるのだろうか。国籍や宗教などを超えて交流をひろげているようす? 母国とのギャップを楽しむ非日常のような日常? もしかすると現地コミュニティやその国の社会的システムに迎合され、加わっていると想像されるかもしれない。しかしわたしの場合、答えははっきりと「NO」である。20数年間日本で過ごし、現在も日本人のパートナーと暮らしていて、仕事のクライアントも日本という自分なんて、ヤドカリの貝のようにポーランドという部屋を一時的に借りているだけにすぎない。
 ところがこのたびポーランドで産まれた娘の場合は、少し違う。わたしたち親にとっての海外が、彼女にとってはまぎれもない故郷なのだ。

 産院を退院する日のこと、何か書類を持ってきた助産師が「今後の経過をチェックするMid Wifeと、予防接種を担当する医者の情報を提出するように」と告げた。
 実はこの制度、そのときまでわたしはまったく知らなかった。
 入院期間が2、3日と早いポーランドでは、退院後はMid Wifeと呼ばれる女性(男性もいるのかもしれない)が家庭訪問をし、子どもの成長経過を見たり、母乳の出を確認したり、育児に関する相談に答えたりする。切開部分の抜糸も自宅にて行われる。

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出産後1人ずつに配布される「子ども手帳」。産まれたときの状態や、検査結果、予防接種についてなどすべての情報が記録される。ところどころ解読不可能なのでポーランド人の友人に尋ねると、彼女らも読めないとのこと

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